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ひなたぼっこ、る 第1話
「今週末は、友達と約束があるので、会えないです……ごめんなさい」
平日の夜、バイト帰りに家に寄った悠希から、申し訳なさそうに報告があった。
…………え───────っ!
心の中はショックのあまり「何で!?」と悲鳴をあげているが、まさか悠希にそんなことを言えるはずもなく。
「そう。楽しく過ごせるといいね」
……なんて、大人の対応をするしかない。
あああ、今週末はこうして触ることもできないのかと、悠希の頬をすりすりと撫でると、くすぐったそうに目を細めて笑う。
その仕草がまた、かわいくて。そんなかわいい悠希を俺のわがままで悲しませるわけにはいかなくて。
こうなるともう、「いってらっしゃい」と見送るしかないのだ……
で、日曜日。
何にもすることがなくて、しかたなくソファに転がっている。
昨日は、次に悠希が来たときに気持ちがいいように……と部屋を掃除したり、布団を干したり、カーテンを洗ってみたりと、年末かというくらいあれこれ動き回った。
そのせいで、今日はかえって何もすることがない。
ちらりと窓の方を見るが、いつもならひなたぼっこしている悠希が今日はいない。
もう何年もこの部屋に一人で住んでいるというのに、この喪失感といったらなんなのだろう……
「───よし、出かけるか」
これ以上家にいても、正直気分は沈むばかりだ。時間だってなかなか進まない。
だったら、ちょっと遠くの店までドライブがてらに出かけよう。
日曜のショッピングモールは、人で溢れかえっていた。子ども向けのイベントがあるらしく、家族連れが多い。
気づけば賑やかな雰囲気をさけるようにして、店内でも静かな売り場へと足が動いていた。
目的があるわけでもなく、ただのんびりと歩き回って……で、見つけた。リビング用品のコーナーに平積みにされていた、それ。
形が変わっているから売れにくいのだろうか……割引になっているようだが、そんなことはどうでもよくて。
丸まった人間が一人、余裕で転がれるくらいの丸い形のラグ。
色は春を感じさせる柔らかな黄緑色。
触ってみるとふわふわで、きっと気持ちよく過ごせそうだな……悠希が。
そう考えるともう迷う必要もなくて、くるくると丸めるとレジに向かう。
まっすぐ向かうつもりが、今度はクッションのコーナーで足が止まる。
一緒にクッションがあってもいいな……
どんなのがいいかな……ラグが原っぱみたいな感じだからな……
頭の中のイメージはすっかり、ひなたぼっこをする悠希だ。それに合うのは……
惹き付けられたのは、これまた丸い形のクッション。ひなたぼっこには太陽が必要だものな。
綺麗な黄色のクッションを手に取ると、もこもこした感触。
気持ちよさそうにぎゅっと抱きしめる姿が目に浮かぶ。
うん、これだな。
さっきまでの沈んだ気分は影を潜め、すっかり機嫌もよくなって再度レジへと向かう。
我ながら現金だとは思うが、自分の頭の中はいつだって、悠希のことでいっぱいなのだからしょうがない。
───ああ、早く悠希が来る日にならないかな。
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