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第4話

はあ……と、ため息をついて啓吾さんが言った。 「いつも好きだって言ってるのに、信じてもらえないのは何でかなぁ……そんなに俺って信用できない?」 信用してないわけじゃないし、信じたい気持ちはある……ただ、啓吾さんにとってベストの相手は自分ではない、と思ってもいるから。 だからこんなに揺れてしまうのかな…… 「こんなに好きなのに、嫌いになんてなれるわけないよ。何でそんな考えにたどり着いたわけ?」 何で……って、それは…… 「──だって、女の子には勝てないでしょ?」 「………はい?」 「啓吾さんはいつも僕のこと、かわいいって言ってくれるけど……やっぱり女の子のかわいさには勝てないよ。今日だって……」 「………今日だって?」 「………僕が横にいるのに……テレビばっかり……見てるし……くっつ…いても…離れちゃ……うし……」 じわじわ出てきた涙のせいで、うまく言葉が紡げない。 「……ぼく…より、その……アイドル…の方が、ひっく……かわい……でしょ……?」 啓吾さんは何にも言わずに、嗚咽をもらす僕の背中を優しく撫でる。 「……ふぅ……とな、りにいる……僕の…こと……忘れちゃ…くらい……好き、なんで…しょ……?そんな、の……勝て…ない……」 アイドルみたいにかわいくはなかったかもしれないけど……僕も女の子だったなら、こんなに不安になったり苦しくなったりしなかったのかな…… そしたらもっと、啓吾さんに見てもらえたのかな…… 情けないけれど、どうにもならないことをうじうじ悩んで……やっぱり僕ってダメなやつだな。 ───そう思ったときだった。 「────わっ!」 啓吾さんは、泣いている僕の脇に両手を差し込むと、ひょいと軽く持ち上げて自分の膝の上にのせてしまった。 びっくりして思わず啓吾さんを見ると、何故かとっても優しい顔をしていた。 僕のこと、呆れてないのかな…… 「なんだ。やっぱりヤキモチ、妬いてくれてたんだ」 「───え?」 ヤキモチ妬いて『くれた』って……そう言ったよね? でも、普通…… 「………ヤキモチ、嫌じゃないの?」 ん?と軽く首をかしげると、啓吾さんはこつんと自分のおでこと僕のおでこをくっつけた。 「嫌じゃないよ。だってそれだけ俺のこと、好きだってことでしよ」 「……それは、そうだけど……」 「なら、嬉しいよ。……それに、何にもせずにほうっておいたのは──ごめん、わざと」 「───え?……」 「いつもはあんまりしないのに、どんどん甘えてくれるから…嬉しくって、ついついやり過ぎちゃった。ごめんね」 そう言って、僕の瞼にキスをした。 唇が触れたところから、じんわりと温かくなっている気がするから不思議だ。 不安だった心も、ゆるゆるととけていくみたい…… 「───あ、ちなみに誤解を解いておくと、俺、このアイドルはタイプじゃないから。かわいいのは、こっち」 そう言うと、啓吾さんはテレビ画面を指差した。 啓吾さんの指が差した方へ、顔を向けると… 「───え?………猫?」 テレビには画面いっぱいに、猫のアップが映っていた。

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