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第8話

───今日も何とか仕事が終わった。 駅から10分の道を歩き、ようやく家にたどり着く。 いつもだったら何でもない道も、疲れた体にはやけに堪える。 ……いっそ、この時期だけ会社近くのホテルに泊まり込むか?……でも、そんなことするとホテル代が残業代を超えるよなあ…… そんなどうでもいいことを考えながら鍵を解錠しドアを開けると…… 「───あれ?」 朝はついていなかったはずの玄関のライトがついていた。 ………これって、昨日と同じだ。───昨日と同じ、だ! 焦りつつも靴を脱ぎながら、体より先にとキッチンに向かって声をかける。 「───ただいま!!」 夜中だというのに大きな声を出したことについては、大目に見てほしい。 出てきてくれよと、とにかく祈るような気持ちで声を出したから。 玄関から廊下に上がったところで…… 「───おかえりなさい、啓吾さん」 ガラッとキッチンのドアが開いて、悠希がひょっこりと顔を覗かせた。 ……ちょっと照れたような、ちょっと恥ずかしそうな顔。 「……えーと、月見うどんと……きつねうどんと……できるけど、どっちにする?……あ、先にお風呂に入っても……」 ……悠希が最後まで言う前に、駆け寄ってぎゅっと抱きしめた。 今日も来てくれたんだ…… 昨日一生懸命語った自分の気持ちが、ちゃんと悠希に伝わっていたことが、嬉しくて嬉しくてしかたない。 しばらくそうしていると…… 「……あのー……」 「うん。何?」 「わかめうどんもできるけど?」 「…………」 「…………」 「───先に風呂、入ります」 しかたなく、悠希を抱きしめていた腕をはなすとネクタイを緩めた。 そんな俺から嬉しそうに鞄を受け取った悠希は、「お疲れ様です」と言って癒しの笑顔をくれたのだった。 end

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