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第5話

体調の戻った啓吾さんと一緒にアトラクションをまわりはじめて2時間余り。 園内をのんびりペースで進みながら順番に楽しんでいると、おどろおどろしい建物の前にたどり着いた。 「………啓吾さん」 「何?」 「お化け屋敷って、大丈夫ですか?」 日本家屋をイメージした和風のお化け屋敷……何でも、旅行で訪れた古い旅館が実は、夜になるとたくさんの幽霊がうごめく心霊スポットだった……という設定らしい。 すでに入口の扉はぼろぼろで、赤い鮮血が飛び散っている。入口でこれってことは、中は……ぞくっと背中に寒気が走った。 「お化け屋敷もホラーも平気だけど……悠希は苦手なんじゃない?」 ………苦手です。 友達ときたときも外で一人で待っていたくらい、苦手。 苦手なんだけど……せっかく二人で来たんだし、入ってみてもいいかもと思って。啓吾さんが一緒にいてくれるなら、心強いし。 「啓吾さん、手、握っててくれる?」 「それは、もちろん」 「……じゃあ、入ってみる」 勇気を出して入口に向かい、フリーパスを提示する。 二人で一緒に中に入ると、すでにそこは真っ暗。何にも見えない。 冷房が入っているのか、それとも場の雰囲気のせいか……とにかくひんやりとしていて肌寒い。 怖くて怖くて、手を握るどころか、啓吾さんの腕にしがみついてしまう。 「悠希、大丈夫?引き返そうか?」 「……へ、平気です。だいじょ───うひゃあ!」 ガタン!と大きな音を立てて障子が僕たちのいる通路側に傾く。 障子の向こう側にはうっすら緑色の光……部屋を覗いてみると、敷かれた畳がぬめぬめとしたもので汚れているよう。 ……これって、血? ぞわっとして、さらに啓吾さんの体にぴったりとくっつくと…… 『───こっちへ、おいで』 女の人の震えた声。 目を凝らして部屋の中をよく見ると、隅のほうに白い着物を着た女が座っていた。 ───まずい。まずいよ! 心臓がばくばくして、逃げたくて仕方がないのに目が離せない。 固まったまま動けないでいると、その女がゆっくりと……本当にゆっくりと、こちらを振り返った。 「───ひっ!───うわあああああああああああああ!!!!!」 そのあとのことは、よく覚えていない。

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