95 / 105
第5話
体調の戻った啓吾さんと一緒にアトラクションをまわりはじめて2時間余り。
園内をのんびりペースで進みながら順番に楽しんでいると、おどろおどろしい建物の前にたどり着いた。
「………啓吾さん」
「何?」
「お化け屋敷って、大丈夫ですか?」
日本家屋をイメージした和風のお化け屋敷……何でも、旅行で訪れた古い旅館が実は、夜になるとたくさんの幽霊がうごめく心霊スポットだった……という設定らしい。
すでに入口の扉はぼろぼろで、赤い鮮血が飛び散っている。入口でこれってことは、中は……ぞくっと背中に寒気が走った。
「お化け屋敷もホラーも平気だけど……悠希は苦手なんじゃない?」
………苦手です。
友達ときたときも外で一人で待っていたくらい、苦手。
苦手なんだけど……せっかく二人で来たんだし、入ってみてもいいかもと思って。啓吾さんが一緒にいてくれるなら、心強いし。
「啓吾さん、手、握っててくれる?」
「それは、もちろん」
「……じゃあ、入ってみる」
勇気を出して入口に向かい、フリーパスを提示する。
二人で一緒に中に入ると、すでにそこは真っ暗。何にも見えない。
冷房が入っているのか、それとも場の雰囲気のせいか……とにかくひんやりとしていて肌寒い。
怖くて怖くて、手を握るどころか、啓吾さんの腕にしがみついてしまう。
「悠希、大丈夫?引き返そうか?」
「……へ、平気です。だいじょ───うひゃあ!」
ガタン!と大きな音を立てて障子が僕たちのいる通路側に傾く。
障子の向こう側にはうっすら緑色の光……部屋を覗いてみると、敷かれた畳がぬめぬめとしたもので汚れているよう。
……これって、血?
ぞわっとして、さらに啓吾さんの体にぴったりとくっつくと……
『───こっちへ、おいで』
女の人の震えた声。
目を凝らして部屋の中をよく見ると、隅のほうに白い着物を着た女が座っていた。
───まずい。まずいよ!
心臓がばくばくして、逃げたくて仕方がないのに目が離せない。
固まったまま動けないでいると、その女がゆっくりと……本当にゆっくりと、こちらを振り返った。
「───ひっ!───うわあああああああああああああ!!!!!」
そのあとのことは、よく覚えていない。
ともだちにシェアしよう!