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第5話

それからしばらく。 僕は、ベッドにもたれて座っている啓吾さんの横に並んで。さっき邪魔されてしまった、まったりとした時間の続きを楽しんでいたのだけれど。 「あ」 ……すっかり忘れていた大事なことを、ようやく思い出した。 「どうしたの?悠希」 「うん。あのね。僕さっき隠れるために、いつもは入らない部屋に入ったでしょ?」 「ああ、そう言えば確かに」 「それでね…つい、部屋の中をきょろきょろ見て…」 「……別に見られて困るものは、何もなかったと思うけど?」 「うん……うん、と……ね……何にも、なかったけど……その……」 「ん?ああ……もしかして、仏壇を見たことを言いたいの?」 「………うん」 啓吾さんが僕を必死に追いかけてきてくれて、それがとっても嬉しかったからつい忘れてしまっていたけれど。 もう一つの謎は解けてはいないんだった… 「そっか…悠希はあちこち部屋に入るなんて、しないタイプだもんね。2年も一緒にいるのに、あの部屋には入ったことなかったのか…」 そう言って少し笑うと、啓吾さんは僕の頭を優しく撫でた。「いい子、いい子」って言ってるみたいに。 「あれはね……あそこには俺の家族がいるんだ」 「……………家族…」 やっぱり、って思った。 そうじゃないかなって思って。でも、でもそれは辛すぎると思って考えることをやめていた一つの仮説を、啓吾さんはあっさりと口にした。 これまで、啓吾さんの口から家族の話を聞いたことがなかった。年末年始も帰省するって話もしたことなかった。 改めて考えたなら、こんなにヒントは転がっていたのに… 思わず啓吾さんの顔色を窺うと、目と目が合って、啓吾さんは何でもないことのように笑った。 「ちょっと長くなるかもしれないけれど、俺の家族の話、聞いてくれる?」 啓吾さんの穏やかな表情に促されるように、僕はうんと頷いたのだった。

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