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第2話 大切なものを

2. 大切なものを 片瀬江の島に直通でくる電車は特急しかない。他は藤沢で一回乗り換えることになる。 藤沢駅まで行って周りを見回すと、 居た! ベンチで駅員に話しかけられてる小さな子…… あぁ、雄介だ。 小さな身体に大きなリュックサックを背負って、青いヘルメットを被っている。いつも自転車に乗るときに被るのだ。 ここまで来たんだ。一人で、 あんな大きな重そうなリュックを持って。 僕はそのベンチに駆け寄りながら、声を出して泣いていた。 びっくりして振り向いた駅員さんと雄介。 雄介が大きな声で、 馳!と叫ぶ。 僕は必死で抱きしめる。涙と洟とぐちゃぐちゃになった顔を雄介のお腹に押し付けて、僕は声を出して雄介に謝った。 「 ごめんな、ごめんな、雄介! 本当にごめん 」 雄介も泣いている、馳、馳って言いながら泣いている。 周りを囲む人たちがホッとしたように会話する声が聞こえていても、僕は恥ずかしいともなんとも思わない 。 この愛しい存在を抱きしめて、ミルクとキャラメルと汗の混じったその匂いを胸いっぱいに吸い込むと、今までの事なんてどうでもよくなった。 神様、ありがとう……見つけた、大切なものを、ここで。

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