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第3話 原田竜也さん
16. 原田竜也さん
竜也さんが僕らを大きくて抱きしめて、雄介の頭をポンポンと叩く。
「 すごいなぁ、雄介、冒険野郎だ」
ニカッと笑ったその顔に雄介も洟水まみれの顔でニカッと笑って答える。
「 さ、お父ちゃんに連絡しなきゃな!
ミッション完了って 」
駅員さんに説明するのに手間取り、雄介のリュックの中にあったお便り帳の連絡先からやっと草太に連絡をして貰って駅員の理解を得た僕らは、
迎えにくると言う草太を待つために原田さんの家に行った。
その夜、僕はまた違う家族を見つけた。他人だらけだけど、
本当に優しくってあったかい家族を。
本当に不思議。初めて会ったジェイさんに雄介は直ぐ懐いた。サッカーの得意なジェイさんと散々お座敷サッカーで遊び、明日は公園でサッカー対決だ!と言われて太陽のような笑顔を見せる雄介。
草太が、
「 俺は間違ってたんだな……
昨夜も雄介の目の前で、電話してきた恵と親権の事で諍いになった。
おふくろも恵の相手が雄介に辛く当たってるって口を挟んでくるから、こんな喧嘩みたいな事ばかりで雄介寂しくなったんだろうな。
このまま恵の元で暮らした方が……」
と呟いた。
「 違うよ草太、草太は間違ってない。
雄介の前でそんな話ししたのは駄目だと思うけど、一緒に居たい気持ちを捨てないで 」
僕の言った言葉に驚く草太。
僕は恵さんの口から迸った、
『 雄介が邪魔だと言って 』
薄笑いするその横の男、あの冷たい眼差しで吐かれた言葉を噛み締めながらそう本心を草太に伝えた。
「 親権?
俺、力になれるかもしれないよ 」
唐突な竜也さんの言葉に、え?と二人して驚いた。
「 俺、弁護士だから、一応 」
三年もお隣さんで親しくしてたのに知らなかった僕たち。
ビックリしてひっくり返りそうとはこの事だ。
「 それで、馳君を口説くこともやめないから 」
ウインクしながら告げる言葉に笑う僕と、睨む草太。
ジェイさんは雄介に馬にされて畳の上をのしのしと這い回る。
時々パオ〜ンと吠えるけど、
「 ヒヒ〜ンだよ~ 」
とお尻を振る雄介を乗せた大きな背中が今度はおんぶになって走り回る。
キャッキャッという雄介のはしゃぐ声。
「 動物園が壊れちゃう~ 」
達也さんが鳴き真似をするとみんなが笑顔になった。
幸せってこんな事だと、
今度はそれを噛み締めた。
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