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第5話 誰か、これは悪い夢だと言ってくれ!

あの倉庫の前から半ば強引に乗せられた ドイツの高級車メルセデス・ベンツ S400は、 首都高の方へ向かって滑らかに走り出した。 んでもって、その後部座席にはツナとドライバーの 朋也以外の先客もいて ――    「あ、あの、ところで小父さん達は誰なんですか?」 「あぁ! そうやった、自己紹介もまだやったな。 わりぃわりぃ ―― わしはこういうもんじゃ」   そう言って、ツナの隣に座る恰幅の良い男が1枚の 名刺を差し出してきた。     ” 株式会社 寿警備   営業部長・鏑木 絢三(かぶらぎ けんぞう) ”       「―― で、営業部長の鏑木さんが俺にどういった ご用件で……」  「詳しい話しは後回しだ。坊っちゃん、かぶの兄貴、 シートベルト少しキツ目に締めてもらえますか?」 朋也が、フロントミラー越しに鏑木を見ながら 険しい目つきで言ってきた。    「なんや、もう、勘付かれたか」 「へえ」 「撒けるか?」 「任せて下さい」 それからこのベンツは一気にスピードを上げ 並走車を追い越し・ ごぼう抜き ――    「うぉっ ―― どわっ ―― ぎゃっ、ぶつかるぅ!  い、一体何がどうしたんですかっ?!」   「なぁに、大したことはねぇ。 ちょいと敵対勢力に尾(つ)けられてるだけや」 「大した事あるじゃないですか!」 這々の体でシートベルトにしがみつき チラリと後方を見れば、 この車と同じようなタイプのベンツが 猛スピードで迫っている。  ツナは今1度シートベルトを確認し、 ソレにしっかりしがみついた。 無事ベンツは敵対勢力の車を撒いて、 とある雑居ビルの地下パーキングへ キキーッとブレーキ音を響かせ停まった。 もちろん鏑木と朋也は平然としているが、 ツナは? ―― といえば、顔面蒼白で シートベルトにしがみついた恰好のままだ。 しかし、何故か鏑木はえらくご機嫌で、相好を崩し、 ツナの肩をバシバシ叩きながら。 「いやぁ~兄ちゃん、あんた、意外に見処あるな。 見直したぜ」 「ハハハ……そりゃ、どーも……」 (お願い、そんなにバシバシ叩かないで…… リバースしそう……) ベンツから降り立って初めて、 ココが新宿の歌舞伎町だという事に気が付いた。        不夜城と呼ばれる新宿という街には、 様々な人種が生息している。 大手デパートや家電量販店が立ち並ぶ一角もあれば、 少し西に足を伸ばすと都庁や高級ホテルなどの 高層ビルが林立する副都心に繋がる。 日本一の歓楽街でもある歌舞伎町を抱くこの街は、 その名の通り24時間眠ることがない。 連れて行かれたビルには、 鏑木達の属する広域指定暴力団・極東連合会系 煌竜会のヘッドオフィスが入っている。 ベンツは地下に停まり、 車から降りた直ぐのとこにあるエレベータに乗る 先導するように鏑木が立ち、逃亡を防ぐ為か?  ツナの後ろにも若い衆が2人ぴったりと立つ エレベータは*階建てのビルの最上階でとまり、 ツナは大きな扉の前に連れて行かれた 扉を軽くノックすると、中から「入れ」と、 威圧的な声が返ってくる 「どうぞ」と、ドアが開けられツナは少し戸惑いつつ 部屋へと足を踏み入れた

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