8 / 46

第8話 意外と天職だったかも?!

それからというもの、 いきなりツナの1日は多忙になった。 学校が終わるとまっすぐに家に帰り、私服に着替えて。 組事務所へ直行、若頭補佐の陣内についてまわり、 幹部の日常業務を覚え。 夜にはスーツに着替えて、付き合いのある提携組織の 幹部に挨拶回り。 土日は、古くからの取引先様や商工会議所、 貸金業主組合、地元商店街の青年部などに、 五代目候補の顔見せに行く。 何せまだ高校生で、跡継ぎとしての器量に周りはさほど 期待してはいなかったようだが、 その人目を惹くたおやかな外見はこの際、 ツナの強みとなった。 そのスーツ姿は彼の未熟さを十分カバーが出来るほど、 芽吹いた若枝のような清清しい印象を与えた。 女性にはない骨ばった華奢な肢体を持つツナの、 どこか儚げな薄幸美少年ぶりに、 年配の姐さん・オヤジ幹部達は熱狂して歓迎した。 慣れない裾捌きも、その危なっかしげな様子と、 俯いたとき項(うなじ)から覗く白い襟足は、 年にも似合わずしっとりと艶めいていて、 色ごとには長けた漢達にも、なかなか評判が良かった。 もっとも、何を勘違いしたのか、 未成年のツナに勺をさせようとした勘違いの輩もいたが それは護衛兼教育係・陣内がやんわりとお断り申し 上げる。 大変なのは側付きの陣内や朋也で、 そういうあからさまに性的な誘いがツナに向けられると ツナ自身は屈託ないサービス全開の笑顔で即対応するの だが、根底にある淫靡な匂いにはちっとも気づかなくて、 おたおたする陣内らを見てきょとんとしているだけなので、 危なっかしくて気が気ではなかった。 なかなかにこの無自覚美少年の護衛は骨が折れるのだ。   でも実際、ツナは陣内や若頭・手嶌の想像以上に よくやっていた。 ただ、どうしても限界はあるので、 時間的・体力的・能力的、どれをとってもなかなかに 一杯一杯ゆえ、気力と責任感だけでカバーしてきた 部分もなきにしも非(あら)ずで。 段取りの悪さや今だけの行事などがなくなれば、 もう少しは円滑に物事がこなせるようになる。 こればかりは時間と経験が解決するのを待つ事しか できなかった。

ともだちにシェアしよう!