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第11話 杞憂
手嶌や佐竹達 ”綱吉擁立派”の幹部として
今日の盃事は、綱吉の生命を脅かす不穏分子を相殺し、
御前自身に綱吉のお披露目をして貰えれば結果オーライ
くらいに考えていたのだが……。
ひと足先に祝いの席から辞してお屋敷の周辺警備に
就いた朋也は、酔い醒ましのコーヒー飲みながら呟く。
「マズいな……こりゃ、今日の盃事、焦ったのは
かえって逆効果だったんちゃうか」
「え~、どうしてっすかぁ?」
行儀見習いとして準構成員になったばかりの蒼汰が
疑問をぶつけてきた。
「御前ほどのお人なら、今まであの晴彦さんがしてきた
候補者潰しも全部お見通しなハズさ。今回のゴタゴタ、
尾を引かなきゃいいけど……」
*** *** ***
一方こちらは、酔い醒ましに庭へ出た綱吉 ――
客人衆の中にいたあの男・竜二に気付いた時は、
もう、心臓が口から飛び出してしまいそうになる
くらいドキドキした。
外へ出た事でさっきの気まずいムードからは
逃れたが、それで綱吉の気分が好転したワケではなく
綱吉は自分の為に催されている祝い事なのに
”あぁ、早く終わんないかなぁ”と、そればかりを
考えていた。
「……もういい加減、ご機嫌直して頂けませんか?
綱吉坊っちゃん」
竜二のそんな人を食ったような口調が、余計に綱吉の
機嫌を損ねる。
「べ、別に俺は不機嫌なんかじゃないですけどー」
竜二は”プッ”と、小さく噴き出した。
「嘘ばっか……ツナちゃんってば、考えてる事は割りかし
すぐ顔に出るタイプでしょ~」
「お、大きなお世話だっ。そんな事より、もしかして
俺の事調べました?」
「は?」
「だって、あんな偶然出来過ぎてます。ここで
顔を合わせる前にバーで鉢合わせて、しかも ――」
綱吉は結城の店で竜二との激しい交わりを
思い出してしまい赤面、言葉を止めた。
「……しかも?」
「いえ、何でもありません」
「いきなり初対面でセッ*スまでしちゃって?」
「!! なっ ――」
「アハハハ ―― 照れてるツナちゃんもめっちゃ
エロいな」
「……」
「ね、知りたい?」
「はい?」
「俺がー、キミの事を事前に調べたか? どうか」
「も、どうでもいいです」
そう。どうでもいい。
この男とは、この場限りの付き合いだから。
「あーっ。今、どうせ俺とはこの場限りだからって
考えたりせんかった?」
”げっ!” と、目を見開く綱吉。
「言っとくけど、俺、キミとの仲をこの場限りに
しようなんてコレっぽちも考えてないから」
(君子危うきに近寄らず。
この男はキケン過ぎる……)
「―― って事でぇ」
と、自分の下半身の昂ぶりへ綱吉の手を導いた。
「ぎゃっ! 何すんだよっ! この変態」
「お前が傍にいるだけでこんなになっちまった、
なぁ、責任取れよ」
「デリヘルでも呼んだら?」
「実はさー、お前とヤッて以来、お前じゃなきゃ
勃たねぇんだ」
「あ~ら、そのお年でEDなんて可哀想ー。
さっさとそのスケベったらしい手をどけろ」
「嫌だ」
綱吉はニッコリ微笑んだ。
「……忠告はしたぞ?」
「あー?」
次の瞬間、綱吉はスッと体を後ろへ引いて、
思い切り竜二の股間を蹴っ飛ばした。
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