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第12話 手嶌 竜二、参上

「―― で、その後はどうしたん?」 手元にあるA定食には目もくれず、 話しの続きに目を輝かせる親友その2・森下利沙。       「どうしたって……速攻、家に帰っただけだが」 その隣にいるあつしが嘆くように呟いた。       「あぁ ―― おらぁ、その優男につくづく同情 するよー。キン蹴りの痛みは男じゃねぇと分からん」     あつしと利沙は双子の兄・妹だが、 二卵性なのでちっとも似ていない。       「んなの、分かんなくて結構だけど ―― にしたって ツナぁー、あんた何考えてんのー」   「え?」 「バツなし・独身・超セレブなイケメン ~ 三拍子も  四拍子も揃った男の何処が不満なの? いい?  あんたには左うちわのバラ色生活が確約された  ようなもんじゃない!」   「左うちわのバラ色な、ねぇ……」 ため息をつき、伏せかけた視界の隅であるモノを 捉え、ゆっくりそちらへ目を向けた。    1枚板の大きなガラス張りの窓の向こうは、 正面玄関に隣設された駐車場。    今、そこへ4000ccクラスの 大型スポーツクーペが1台停まった。                                      綱吉と同じくそれに気が付いた数人の男子が ざわつき始める。    あつしも気が付いた。       「うわっ、すっげぇー …… 本物、初めて見た……」 「なに、アレ、そんなに凄い車なの?」 とは、車(メカ)音痴の利沙。       「たった500万台しか生産されなかった限定販売車。  おそらく中古でもうン千万は下らないだろうな」        車好きな男子達はその車の優美なフォルムに 目が釘付けで。    女子達は、その車から颯爽と降り立った男に 目を奪われ、ギャーギャー騒ぎ出す。       『チョーかっこいいんだけどー』 『モデルか俳優さんかなー』 『誰の父兄やろ』 『何の用事で来はったんかなー』 何の用事だろうと、綱吉にとっては迷惑この上ない 来訪だった。    女子達の注目の的は手嶌 竜二。    あの祝宴の締めくくりに(?!)、 綱吉から股間を蹴り上げられた男だ。 ***  ***  *** 私立祠堂学院高等学校。 4年前創立された新設校。    こちらは東京分校で、 中部と東北にも生徒数***名規模の分校がある。 因みに学校本部は京都府・東山区。 学校の全体レベルとしては ”中の上” 秀才と言われる生徒の約1~2割りが 現役で国立の難関大学へ合格している程度の 高校でも。 ハイソサエティ出身の子息・子女が多く在籍し、 OB・OG(卒業生)の中には官僚や某・石油産出国の 王族もいる。 ***  ***  *** あぁ……夢なら早う醒めてくれ ―― 奴がかなりハイレベルなイケメンでも、 自分の好みにド・ストライクでも。 絶対関わり合いにはなりたくない!    とはいっても、敵は教室の前で待ち伏せていた       「―― よっ。また、会ったな」 綱吉はガン無視で教室内へ入ろうとする。 竜二はその綱吉の腕をすかさず掴んだ。    室内にいるクラスメイトも、お隣のクラスや 通りすがりの学生達まで、 綱吉と竜二の動向に興味津々だ。       「また、蹴っ飛ばされたいですか?」 「いやぁ~、マジあれには参った。俺って結構Mっ気 あったんかなぁ。あれからお前の事思い出して、 2回もヌイちゃったよ~」   「やっぱ変態っ!」 竜二は”蹴っ飛ばされ防止”の為、 綱吉をぐいっと抱き寄せた。       「変態な上に無節操な欲情魔」 「ありがと」 「大声出すぞ」 「あの時みたいに?」 ―― あの時。    つまり、初対面にもかかわらず、行きつけの店の トイレで最後までイタしてしまった、 あの時を指しているのだろう……。    情事の一部始終をまざまざと思い出し、 かぁぁぁっと顔を真赤にする綱吉。       「そのカオ、唆るねぇ ―― 付き合え」 綱吉の腕を掴んだまま、階段に向かってズンズン 歩き出す。       「って、俺はまだ午後の ――」 「授業は欠席すると講師に伝えておいた」 「そんな勝手に ――!」 「四の五の言わずに黙って着いて来いっ。 初仕事だ」     へ? 初仕事って……。              

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