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第13話 初仕事
結局、あれよあれよという間に外へ連れ出されて、
あつし他ほとんどの男子が羨望の眼差しで見ていた
レクサスLFAの助手席へ押し込まれ ――、
「さぁ、シートベルトはしっかり締めてね~♬」
綱吉は、股間を蹴り上げてまで逃げた男の運転する
車で何処へか? 連れて行かれる。
そして綱吉は乗ってから気が付いた。
この車……学生寮のおんぼろ公用車よか、
よっぽど乗り心地ええかも……。
車はとても滑らかに走り出したが。
イザって時すぐに逃げられるよう、
綱吉の手はシートベルトを外すスイッチと
ドアノブにずっと掛けられたままだ。
傍目にも緊張しているのがはっきり分かる。
「参ったなぁ。俺ってそんな信用ない?」
「(はっきり即答)はい」
沈黙…………
こんなおっさんと共通する話題などないと思うが、
沈黙には耐えられない……。
何か喋らないと……。
「ところでおっさん何者? 平日の真っ昼間から
ふらふら遊び呆けててええん?」
綱吉は竜二に問うた。
「……おっさん?」
(真っ先に反応すんのはソコかよ……)
少しの間があいて、綱吉をチラ見。
この反応……、
「おっさん ―― や、なかった?」
「……一応俺、煌竜会の中で一番シノギ上げてる
優良企業の代表取締役やから、HPにもプロフ載せてた
思うが ―― 今年33だ」
しかし、ヤクザがホームページにプロフって……
因みに、学生寮の寮母さんも厨房のおばちゃんも
共に34才。
やっぱ ”おばさん” 呼ばわりされると、
めっちゃ怒る。
まぁ、まだ10代後半の俺にとって33・4の
年上は”おじさん・おばさん” 以外の何者でも
ないんだけどね。
「あ ―― すんません」
「しっかし祠堂もかわったなぁ。お前みたいな学生が
いるなんて意外だった」
「……それどうゆう意味ー?」
「ふふふ……ご想像にお任せします」
「はぁっ??」 やっぱ何気にムカつく!
*** *** ***
『ホラ、着いたぞ』の声で、降り立った所は
以前、寿警備・営業部長の鏑木と共に初めて訪れた
煌竜会のヘッドオフィスがある自社ビル。
そして、今回訪れたのもあの時と同じ最上階フロアで。
あの時、事務所にいたのは陣内のおっさんと
舎弟頭のマオとかだったが。
何と今日は……!!
「座りなさい」
祖父・九条泰三が1人、ソファーに座っていた。
まぁ、放り込まれたとき、扉横にいかにもな
護衛が2人たっていたが。
俺は言われた通り祖父さんの正面のソファーへと
腰を降ろす。
祖父さんは、落ち着いた柄の和装だが流石、
ヤクザの頂点に立つ人物、ただ座っているだけなのに
威圧感が半端ない。
「さっさと用件を済ませようか。
この書類にサインしなさい」
示された書類を手に取り、ひと通り記載されている
内容に目を通した。
養子縁組みの書類のようだ。
『九条泰三』と書かれてるのを見つけ顔を上げる。
「雅史の奴から養子縁組の話しは出なかったのか?」
「いいえ、父も母も幾度となく戸籍の上でだけでも
自分達の本当の息子になれと言ってくれました。
自分で言うのも何だけど、あの頃の俺はけっこう
ひねくれてて、他人の優しさなんかそう簡単に
受け入れる事が出来なかった……」
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