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第22話 狭まるターゲット

手嶌は国松が乗っていたというタクシーに彼が わざと置き忘れていった、品を ―― ”これは遺失物だから警察へ届ける”と渋る 運転手を説き伏せて入手。    オフィスへ行くまで待ち切れず、車に搭載の カーナビで国松が残していった品 ―― DVDディスクを再生した。    それは、手嶌も以前目撃したとある専門学校で 行われていた深夜の競売を隠し撮りした映像だった。    今回のモノは、以前見た時より幾分絵画類以外、 つまり人身の方の出品が多いようだ。    それに、手嶌が見たところ、出品されている 少年少女のクオリティーも格段に高い。    それを証拠に落札金額も軒並み億超えだ。    隣に座った矢吹がもう1度ディスクを再生する。       「……もちろんさっきの人身売買も大問題ですが、 ココに出品されている美術品はおそらく全て、 盗品ですよ、社長」   「!! またかよ」 「一番初めに映ってたのは確か、1990年台に ボストンの美術館から強奪されたレンブラントの  『ガリラヤの海の嵐』ですし ―― あ、ホラ、今 出てるのは、フェルメールの『合奏』です」   「次なる問題は、連中が一体これらを何処に保管 してるか? だな」   「それは北岡を張らせてる朋也に任せてあります」 「―― 明日からまた、当分の間忙しくなるぞ。 今のうち、体を休めておこう。今日はこのまま まっすぐ自宅に帰る」   「了解」 と、矢吹は前方の座席へ移動した。 ***  ***  *** ”極東の跳ね馬”が、じわり じわりと、 その包囲網を狭めているとも気付かず、 北岡組 3代目組長・北岡洋祐は両手に華、 上機嫌で舎弟達と上等なワインを傾けていた。         ここは、北岡が京都市内に幾つか所有している マンションのひとつ。    京都では古(いにしえ)のイメージを保持する為、 又、神社仏閣や古民家などとの調和を保つ為、 行政の条例などで高層建築が出来ないので、 その分、内部には贅の限りを尽くした高級億ション がかなりの数ある。    北岡のこのマンションはメゾネット式の大型 5LDK。 アイランド型の広々としたキッチン ――、 南向きのサンルーフテラス、ジャグジー、 2つのウォ-クインクローゼット、 多目的ルーム、本格的バーカウンター、 特注のオーダーメイドバスルーム、 広々約50畳のリビングルームがある。       『失礼しやす』と、声をかけ、入って来た組員が 北岡へ頭を下げたまま告げる。       「椎名の奴ですが、そろそろ休みが欲しいと言うてる んですが、どないしたら宜しいでしょうか」   「んー、そうやなぁ~……彼には随分と頑張って もろうたし、これからも頑張ってもらわなあかんから ここらでちょいと、ご褒美やっとこか」   「ほな、外出を許可しても?」 「あぁ、但し、監視はつけるよ。それに2時間だけやて 言うといてな」   「はい、畏まりました。失礼しやした」 去ってゆく組員を見送り北岡の右側に陣取る 若い娘が言う。       「やん。あの子、可愛いわ」 「へぇ~、美保ちゃんは、あんなんがタイプなんか」 「ん~、まーくんも、ちょい悪オヤジっぽくてええ けど、あぁゆう年下も母性本能擽られるかなって」     北岡は左側の娘にも尋ねる。       「ほな、乙ちゃんはどんなんがタイプー?」 北岡が ”乙ちゃん”と声をかけた娘は、 キヨにプロの勝負メイクを施させた手嶌の妹・乙姫 である。    女はいくらでも化粧で化けると言われる通り、 北岡は煌竜会の本部や九条老の別宅など でも何回も、九条の寵姫としてこの乙姫に 会っているハズなのに、化粧が変わったくらいで 女の変怪を気付かないでいるのだ。    乙姫は手嶌の命で、朋也と共に北岡の内偵中 だった。 ついでに言うと、右の美保という娘は乙姫が レディースだった頃可愛がっていた後輩だ。             乙姫のスマホにメールの着信。         ”ハッピーバースデー・乙姫!    プレゼントは何がいい?”         友達から届いたように見せかけているが、 これは北岡の気を引く為、乙姫自身が時間予約で 自分から送信したメールだ。       「おや、乙ちゃんは誕生日やったん?」 案の定、北岡は鼻の下を伸ばし、乗ってきた。       「うん、明日ね」 「ほな、何ぞわしもプレゼントせなあかんな」 「そんな~、北岡はんにはいっつもお世話になってます から……」     謙遜しつつも、心の中では”やったね!”と ガッツポーズ。             「遠慮せんと言うてみい? 何でもええで」 「ええー、でもー……」 「貰っちゃいなよ、乙姫さん。私なんか**の マンション貰っちゃたぁ」     と、美保が言った。    「ほ~ら、言うてみぃ~?」 と、北岡の右手が厭らしく乙姫の太ももを 撫で回す。    乙姫はその手触りに内心物凄い嫌悪を感じながらも 遠慮がちに ――、       「ほな、北岡はんしかでけん事、お願いしたいんや けど。ええ?」     そう言いながら、乙姫は北岡を上目遣いで うっとり見つめた。

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