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第27話 不穏な気配
横浜の”元町&桜木町”界隈は、
おそらく関東で新宿歌舞伎町と並ぶ最も多種多様な
人種が巣食う場所だろう。
堅気の人間から極道、ノーマルな日常を送る者、
風俗で身を売る者、
ヘテロセクシャルからトランスジェンダー。
戸籍のない者、外国からの密航者、不法滞在者達。
成功者とホームレスが共存する街。
今このハマを仕切っているのは、
煌竜会とその系列の暴力団である。
海外マフィアの暗躍は止めるすべもなく、
昔堅気の暴力団は姿を消しつつある。
ネットで銃やドラッグの取引ができる時代だ。
スマホ一つで、若者はドラッグを手に入れる。
そんな時代に、日本刀を振り回すようなヤクザの
任侠道など、通用するはずもない。
中部最大の暴力団組織である3代目・大河内組は、
先代の組長が人徳者だったことで知られる。
極道の親分に人徳者というのもおかしな話だが、
いわゆる義理人情を重んじる人物だったのだ。
西の大河内、東の煌竜と言われ、頭同士が互いに
その存在を認め合っていた。
だが、先代が亡くなり代替わりしてから、
この均衡が崩れてしまった。
大河内の跡目は典型的な世間知らずのボンボンで、
後見人でもある若頭・熊田に言われるがまま
ことあるごとに煌竜会を目の敵にするようになった。
それでも古参の側近がいた頃はまだ歯止めが
効いていたが。
彼らが前線を退いてからというもの、新組長の
暴走が始まった。
煌竜会のお膝元であるこの横浜で、ここ最近
小競り合いが頻発している。
このまま何事もなくいってくれればいいが……
だが、手嶌の不安が現実となるのは
そう先のことではなかった。
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