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しっかしさすがに十代高校生の俺でもアル意味疲れるんです。 「よっし」 やたら広いレストルームで紅唯千は鏡と向かい合っていた。 ピカピカ白光りするカウンターにはメイク道具がずらり、というか、ぐちゃぐちゃ。 鏡に写るはふんわりエアリーなシフォンの白トップスにプリーツスカート風のミニな花柄フレアパンツ。 顔は新作コスメでメイクバッチリだ。 紅唯千はこの別荘に来てからずっと女装を続けている。 そもそも辰巳に素顔を見せたことがない、制服も私服も、一度だって。 幻滅させたらなんか悪ぃし。 最初の出会いで女装してたから、何となく素を出すタイミングが掴めなくって今に至る、とゆーか。 お風呂の後にもメイク、朝は辰巳より先に起きてまずメイク直し、そうして紅唯千は二度寝していた。 パンパンな荷物は全て女子モノの服とメイク道具。 抜かりない。 それに、このペディキュア。 俺がドラッグストアで買う安いのと違って、ノリも乾きもよくって、とにかく色がキレーで。 辰巳さんが俺にくれた。 ここに来た初日、しかも辰巳さんが塗ってくれた。 『くそスケベなお前に似合う色だろ、コイ』 せっかくのプレゼント台無しにしないためにも、ちょっと疲れっけど、辰巳さんの前ではバッチシ女装してねーと。

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