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6-組長の新妻になりました!?-最終章!
「小縣が危険だ」
紅唯千は目の前がまっしろしろになった。
つい一分前までは、一学期の終業式が済んでさぁこれから夏休み、ウキウキルンルン上機嫌でいた。
それが校門を抜けたところで「鬼津子組」傘下の組の若頭、亜難に呼び止められて、不吉な台詞を聞かされて。
尋常ならない酷暑も忘れてその場で凍りついた。
き、危険って、どーいう意味?
まさか辰巳さん……抗争か何かで敵対してる相手から撃たれた?
「えぇぇぇえ」
同校の生徒らが傍らをぞろぞろ通り過ぎていく中、ぱにくって混乱して今にも泣き出しそうな紅唯千にダークワイン色のワイシャツを腕捲りした亜難は言う。
「小縣のために来てくれるか」
た、た、辰巳さんが死んじゃう(泣)
紅唯千の懸念に反して辰巳は割と比較的無事でいた。
「辰巳さああああん!!」
亜難の運転する黒塗りの外車で紅唯千が連れてこられた先は、急ピッチで開発が進んでいるベイエリアの最良立地に堂々と鎮座するタワーマンションだった。
低層階には複数のオフィスが入っており、高層階は全室オーシャンビュー、居住者専用のラウンジやパーティールームなども完備されている。
エレベーターで一気に上昇してメゾネットタイプである2LDKのお部屋へ。
壁一面ガラス張りで吹き抜けのリビングから一望できる景色をチラ見する余裕もなく、亜難の後を追って白い階段を上り、寝室へ直行。
「コイ」
指も耳もどこも欠けていない、発砲による怪我も負っていない、これといった外傷は見受けられない、キングベッドにいた辰巳の元へまっしぐら。
「よかったぁっ、生きてるっ、辰巳さん生きてるよぉっ」
紅唯千は抱きついた。
失われるかもしれないと思った温もりにがむしゃらになってしがみついた。
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