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第19話
そして他の水槽を見ながら、イルカショーの会場に着く頃には椎河さんも落ち込みから復活していた。
「あっちに座ろっ」
「えっ、そっち濡れない?」
「濡れる方が楽しいよ」
女の子って普通濡れたくないと思うものじゃないのかと思いつつ、俺の手を取り階段を降りていく。
「ここにしよっ」
そして座ったのは前から二列目だった。
前列は濡れる可能性があるので注意してくださいの看板が立っているのに加え、注意のアナウンスも流れている。
「本当にここでいいの?」
「うんっ、…あっ、神代くんはやだ?私勝手に…」
一度座った椎河さんはパッと立ち上がった。
変わらず俺の手は握ったままだ。
「ううん。いいよ、ここで。ほら、もうすぐ始まりそうだし、座りなよ」
くいっと手を引くと、今思い出したように繋がれた手と俺の顔を交互に見て顔を赤くした。
「ご、ごめんねっ、手っ…」
「え?あ、別にいいよ。ほら、いいから座りな?」
そう言うと、パッと手を離して椎河さんは隣に座った。
そしてすぐに音楽が流れ出し、イルカショーが始まった。
「わぁ!」
とイルカが飛ぶ度に椎河さんは感嘆の声を上げる。
そして、大きなイルカが飛び、
バシャンと大きな音を立てて水飛沫が上がった。
「きゃー!」
水が思いきり掛かる。
せっかく整えたであろう髪がくしゃくしゃになっても、椎河さんは楽しそうだった。
そしてイルカショーが終わり、祥馬たちと合流した。
「えー!2人ともめっちゃ濡れてるじゃん」
「前に座ってたのか?」
驚く桐崎さんと祥馬に俺と椎河さんは顔を見合わせて笑った。
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