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第21話
「楽しかった?」
俺の顔を覗き込んできた。
「うん、楽しかったよ」
「そう」
それだけ言うと家に着くまでお互い何も喋らなかった。
でもそれを苦痛だと感じたことはない。
そして先に俺の家に着く。
「じゃあ、明日」
「おう、明日も俺朝練あるから」
「うん、頑張れ」
思っていたより楽しかったし、普通に楽しんでいた。
椎河さんと一緒で良かった。
4人でずっといたら、あんな風にきっと楽しめなかったと思う。
その時、ピコンとスマホが音を立てた。
見てみると、連絡先を交換していないはずの椎河さんかメッセージが届いていた。
"久城くんから連絡先聞いちゃいました。
勝手にごめんなさい。
今日はありがとう。どうしてももう一回お礼が言いたくて。私に合わせてくれてありがとう。また、一緒にどこかに出掛けられたらいいな。"
わざわざ律儀だな。
さっき別れる時だってお礼言ってくれたのに。
「…やっぱりいい子だなぁ」
"大丈夫だよ。こちらこそありがとう。
楽しかったよ。そうだね、また機会があったら。"
と返事をした。
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