25 / 260

第25話

「あ、そうだ。私もう一つ行きたいところがあって…祥馬くん一緒に行ってくれる?」 「あぁ。でもそれなら帰り道も一緒だし妃捺ちゃんも」 「妃捺は今日早く帰らなきゃいけないから!あ、でも駅までは瑛翔くん送って行ってあげて?」 どんどん進んでいく会話に呆然としていると急に話を振られて、俺は咄嗟に頷いた。 「じゃあまたね!あ、妃捺…」 ファミレスを出たところで解散になった。 別れる間際、桐崎さんは椎河さんに耳打ちした。 椎河さんは頬を僅かに染めて頷いた。 そして駅までの道を並んで歩いている途中で、椎河さんは突然、俺の前に立ちこちらへ振り向いた。 「どうしたの?」 「あの、ね…」 この雰囲気はよく知ってる。 これから起こることが予想できた。 「私…」 椎河さんが口を開いた時、ちょうど前から人がやって来た。 「っ…」 パッと椎河さんは顔を隠すように俯いてしまった。 そしてその人たちが通り過ぎてから、椎河さんはそっと顔を上げた。 その顔は赤く染まっていた。 「あ、あの…私、神代くんのこと、好きです。わ、私と付き合ってもらえませんか…?」 一生懸命さがすごく伝わってくる。 椎河さんとはまだ一回しか出かけたことはないけれど、メッセージのやり取りからも素直でいい子だというのは分かっていた。 「えっと、俺…」 「ま、待って」 「?」 口を開こうとした時、椎河さんがそれを止めた。 「あの、我儘だと思うんだけど、その、返事はまた後日でもいい…?ちょ、ちょっと私のキャパシティーオーバーっていうか…」 テンパっている椎河さんはそう提案してきた。 「うん、分かった」 「っ…明後日、また会える?」 「うん」 そして、明後日の夜会うことを約束をして、俺たちは駅で別れた。

ともだちにシェアしよう!