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第28話

「あの、久城先輩と喧嘩してるんですか?」 隣を歩く後輩(早坂さんというらしい)は様子を伺いながら尋ねてきた。 さっきの様子を見てそう思ったのかな。 まぁ、あれだけを見たら喧嘩してるように見えるか… 「んー…喧嘩なのかな…」 「久城先輩に彼女さんが出来てからあんまり仲良くない感じなんですか?」 「いや、そんなことないと思うけど…」 側から見るとそう見えるのかな。 仲良くなさそうに。 まぁ、一緒に帰ることはほとんどなくなったけど。 「藤白先輩とは帰らないんですね」 この子は、俺と佑嗣が幼馴染みということも知ってるのかな? 「ふっ、なんか詳しいね?」 「っあ、ごめんなさいっ。噂話とかで…。自分のことが色々知られてて気分悪いですよね…」 「いや、早坂さんが謝ることじゃないよ。慣れてるしね」 俺は笑ったけど、早坂さんはそれでも気にしているようだった。 その後はなんの部活に入ってるとか、担任の先生は誰だとかそう言う話をして駅までの道を歩いた。 そして駅が見えてきた頃、 「神代先輩は電車ですか?」 「うん、そうだよ」 「私は徒歩なので…。今日はありがとうございました!さよなら!」 ペコっと頭を下げてから、早坂さんは足早に去って行った。 その後ろ姿から顔を逸らし、駅の改札をくぐる。 18時を回っているこの時間でも陽の沈んでない明るいホームは、人の多さも加わって眩暈がしそうなくらいの暑さだった。 祥馬のことを好きだと自覚したのも、こんな暑い夏の日だったことを思い出して、少しだけ憂鬱な気分になった。 そして、俺は決めた。

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