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第30話
「実は私、神代くんのこと中学の時から知ってるの」
「え?」
俺たちはまたベンチに座り、話していた。
さっき空いていた1人分の距離はもうなかった。
「私、第二中だったんだけど、神代くん第一中で部活の練習試合で第二中に来ること結構あったでしょ?」
「椎河さん二中だったんだ。うん、行ったことある」
中学の時は、二中のグラウンドの方が一中より広くて、よく練習試合をしていた。
「それで3年生の時に話したこともあるんだよ」
「えっ、ほんと?全然覚えてない…ごめんね」
「ううんっ、二年も前だし、話したのはその一回だけだったし」
いつ話したんだろう?
「あの時から、神代くんのこといいなって思ってたんだけど、自分から話しかける勇気もなくて…」
椎河さんは俯いて自分の手をきゅっと握った。
「それで、高校に入ってからは、たまに雑誌に載ってる神代くんのこと見てたんだけど、澪央が神代くん見てこの人知ってるって、彼氏の友達だって聞いて…」
「…もしかして水族館の時、俺が来るって知ってたの?」
「うん…あの、澪央が協力してくれるって…ご、ごめんね…こんな、ストーカーみたいな…」
多分、祥馬もこれを知ってたんだ。
椎河さんが俺のことを好きだって。
それで、桐崎さんに協力を頼まれたんだ。
だから、俺が行くって返事をした時、ありがとうって言ったんだ。
4人一組のペアチケットって言うのはただの口実で、人数合わせなんかじゃなかったんだ。
安心したんだ。俺が行くって言って。
これで協力出来るって、そういう意味のありがとうだったんだ。
笑える。
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