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第44話
2人でアイスを食べて、楽しく話していれば椎河さんのスマホが鳴った。
「もしもし?澪央?」
そして一言二言話すと、通話を切った。
「終わったみたい。立体迷路の前で待ち合わせしようって」
「あー…さっきあったね」
「うん、行こっ」
椎河さんは自然に俺の手を取り歩き出した。
俺も、そっと握り返した。
「おー!来た来た!」
「妃捺〜」
立体迷路の入り口付近に祥馬と桐崎さんが立って、こっちに向かって大きく手を振っていた。
「すっごい楽しかったよ!」
キラキラの笑顔で言う桐崎さんは眩しかった。
「次これ入ろ!」
「勝負しようぜ!」
入り口が左右に二つあるらしい。
そして俺と椎河さんは左に、祥馬と桐崎さんは右へと進んだ。
「私方向音痴なんだよね」
「そうなんだ?」
「うん」
そんなことを話しながら進んで行くと行き止まりになり、戻って先に進もうとしたら椎河さんは来た道を戻ろうとした。
「椎河さんそっち今来た道」
「えっ、そうだっけ…」
恥ずかしそうに戻って来た。
「本当に方向音痴なんだ」
俺が笑ってしまうと、椎河さんは唇を噛み締めて俺の胸を軽く叩いた。
「もうっ、笑わないでよ」
「ふっ、だって可愛くて」
俯く椎河さんの真っ赤になった耳に触れると、ピクッと小さく肩を震わせた。
そして顔を上げ俺を見上げた。
本当に、可愛いと思う。
俺には勿体無いくらい。
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