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第47話
「…聞きたくないって言ったのに」
ポロリと、溜まっていた涙が溢れてこぼれた。
「ごめんね。椎河さんのことが嫌になった訳じゃない。俺、今まで何人かの女の子と付き合って来たけど、一番椎河さんと一緒に居るのが楽しかったよ」
「…じゃ、じゃあどうしてっ」
「このままじゃ、椎河さんを傷つけると思った。俺は、椎河さんが思ってるような奴じゃない。椎河さんみたいないい子に、俺は相応しくない」
溢れる涙を拭おうともしないで、椎河さんは首を振った。
「そんなことないっ…私は神代くんが好きなの…それだけじゃだめなの…?」
「そうじゃない。そうじゃなくて…」
「やだっ、私別れたくないっ…別れたくないの…」
こんなに取り乱した椎河さんを見るのは初めてだった。
傷つけてしまうんじゃないかって、不安はあった。
好きになれないんじゃないかって。
それなら、最初から付き合わなければ良かった。
現に、こんなにも泣きじゃくる椎河さんを見て、俺は動揺してる。
それでも、俺の決意は変わらない。
もう、傷つけてしまったのなら、、
「俺は最初から椎河さんのこと、好きじゃない。好きになれなかった。これ以上付き合ってても時間の無駄だと思う。だから、別れて欲しい」
「っ…!」
酷いことを言ってる自覚はある。
でも、このまま付き合っていても椎河さんが可哀想なだけだ。
「やだ…」
それでも、彼女は否と言った。
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