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第56話
翌日、佑嗣が約束通り迎えに来てくれて、一緒に学校へ向かった。
気を遣ってくれているのか、佑嗣は祥馬の話どころか、学校の話さえしなかった。
「瑛翔はここな」
「昨日聞いたから分かってるよ」
「忘れてるかと思って」
笑いながら佑嗣は席に着き、俺も自分の席である佑嗣の前の席に着いた。
それから、朝のHRの始まるギリギリのところで祥馬が教室へ入って来た。
一瞬合った目はすぐに逸らされた、気がした。
そもそも目なんて合ってなかったのかも。
気のせいかと思ったけど、それは時間が経つにつれ、そうではないと嫌でも気付かされた。
昼休みになり、今までなら当たり前のように一緒に食べていたのに、祥馬は近くの席の人達と楽しそうに食べ始めた。
佑嗣は俺を教室から連れ出して屋上に向かった。
「こうなるかもって思ってたけど、目の当たりにするときついね」
笑って言ったのに、佑嗣は笑ってはくれない。
「強がんなよ」
「それは無理でしょ」
苦笑いする。
「俺がさ、あれは冗談だったって言えば、前みたいに戻れるのかな」
佑嗣は何も言わなかった。
それは無理だと思うから?
何も言わない佑嗣に、何か言えるわけもなく、
結局その答えは分からないまま。
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