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第61話
「何で…こんなことするの…祥馬は、桐崎さんが好きなんでしょ?」
「好きだよ。でも、お前を佑嗣に取られるのは気に入らない」
「は?意味分かんない。別に俺が誰と付き合おうと勝手でしょ。今までだってそうだったのに。その相手が佑嗣だとしても」
ダンッ!
肩を掴まれ壁に打たれた。
「いっ…!」
「佑嗣のこと好きなのかよ」
「…好きだよ、」
「俺より?」
「…祥馬は酷いことを言うね。俺のものにはなってくれないのに、そんなこと聞いてくるなんて」
「……」
「自分のオモチャを取られそうになってる子供みたい」
「お前はオモチャなんかじゃない」
「そんなのどうでもいいよ。俺は、祥馬のこと好きだけど、こんなことは望んでない。桐崎さんと別れるつもりなんてないのに、それってただの浮気だよ」
肩を掴む祥馬の腕を掴んだ。
「俺のこと散々拒絶しといて、昨日自分で言ったこと忘れたの?…他の男に、佑嗣に取られそうだからってこんなことするの?」
「俺はっ」
「自分のことを好きな限り話したくないし、顔も見たくないって言ったのは祥馬だよ」
祥馬は苦い顔をした。
「俺はその言葉にも、気持ち悪いって言われたことにも傷ついたよ。祥馬にとっては事実で、本当の気持ちだったんだろうけど…」
祥馬が、傷ついた顔をした。
何でそんな顔するの?
でも、次の瞬間
「んっ!…」
また唇が重ねられた。
「んんぅ、」
舌先を吸われ、くぐもった声が鼻から抜ける。
そして唇は離れた。
俺たちの間には糸が引き、祥馬は俺の唇を舐めた。
「…気持ち悪いんじゃないの?好きでもなんでもない俺とのキスなんて」
「それは……」
言いかけた言葉を、祥馬が口にすることはなかった。
言い淀むことで、全てを物語ってる。
「…俺は最悪だよ。祥馬とのキスなんて、知りたくなかった」
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