63 / 260

第63話

高校に入る前、祥馬は髪を染めた。 俺も染めようと思ってたけど、祥馬に 『瑛翔の髪ってちょっと茶色っぽくて綺麗な色だよな。俺この色好きだから染めんなよ』 と言われて、結局染めなかった。 あれから一年半経った今でも、一度も染めてはいなかった。 「どう?アッシュベージュは。初めてだからそんなに今は色入ってないけど、日にち経てばもう少し明るくなると思うよ」 「いい感じです、ありがとうございます」 そんなに色が入ってないと美容師の圭(けい)さんは言ったけど、染める前に比べたら随分明るい色になっている。 「気に入ってもらえて良かった」 そして少しだけ会話をしてから、支払いを済ませ店を出た。 外はすっかり日も沈んで暗くなっていた。 翌日。 「何かあった?」 今日もまた、佑嗣が俺を迎えに来てくれた。 俺が玄関を出て、佑嗣の視線がまず髪にいったのが分かった。そして開口一番出たのはそれで、俺は苦笑した。 「まぁ…うん」 言い淀んだからか、佑嗣は察してくれたようで、 「話したくなったらでいいよ。別に無理して聞かない。にしても似合ってんね、染めてなくても綺麗だったけど」 佑嗣が俺の髪に触れる。 「これ何色?」 「アッシュベージュだって」 「ふぅん…」 「真似しないでよ?」 「ははっ、しねぇわ!」 二人で笑い合って、学校に向かった。 学校に着くなり何度も声を掛けられる。 「神代くん髪染めたんだ!かっこいいね!」 「瑛翔くんその髪色似合ってるね!」 「ありがとう」 笑って返すと、キャーと黄色い声が上がる。

ともだちにシェアしよう!