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第63話
高校に入る前、祥馬は髪を染めた。
俺も染めようと思ってたけど、祥馬に
『瑛翔の髪ってちょっと茶色っぽくて綺麗な色だよな。俺この色好きだから染めんなよ』
と言われて、結局染めなかった。
あれから一年半経った今でも、一度も染めてはいなかった。
「どう?アッシュベージュは。初めてだからそんなに今は色入ってないけど、日にち経てばもう少し明るくなると思うよ」
「いい感じです、ありがとうございます」
そんなに色が入ってないと美容師の圭(けい)さんは言ったけど、染める前に比べたら随分明るい色になっている。
「気に入ってもらえて良かった」
そして少しだけ会話をしてから、支払いを済ませ店を出た。
外はすっかり日も沈んで暗くなっていた。
翌日。
「何かあった?」
今日もまた、佑嗣が俺を迎えに来てくれた。
俺が玄関を出て、佑嗣の視線がまず髪にいったのが分かった。そして開口一番出たのはそれで、俺は苦笑した。
「まぁ…うん」
言い淀んだからか、佑嗣は察してくれたようで、
「話したくなったらでいいよ。別に無理して聞かない。にしても似合ってんね、染めてなくても綺麗だったけど」
佑嗣が俺の髪に触れる。
「これ何色?」
「アッシュベージュだって」
「ふぅん…」
「真似しないでよ?」
「ははっ、しねぇわ!」
二人で笑い合って、学校に向かった。
学校に着くなり何度も声を掛けられる。
「神代くん髪染めたんだ!かっこいいね!」
「瑛翔くんその髪色似合ってるね!」
「ありがとう」
笑って返すと、キャーと黄色い声が上がる。
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