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第64話
教室に入ると、すぐそこの席にいた祥馬が俺を見た。
その顔は一瞬で歪められた。
俺は見ていられなくて、顔をすぐに逸らして自分の席に向かった。
どうしてそんな顔するの。
自分からしたんじゃん。
何で、傷つけられたのは俺なのに、そんな嫌悪するの?
この髪だってどうせ、綺麗な色だって言ったことなんて覚えてないんでしょう?
教室でも俺の髪は評判が良かった。
「モテモテだねぇ?瑛翔くん」
佑嗣が揶揄うような口調で言いながら俺の髪を撫でた。
「まぁね」
「ははっ、謙遜しろ」
「謙遜した方が嫌味でしょ?」
「一回やってみて」
「そんなことないよー佑嗣の方がかっこいいよー」
「何その棒読み、傷ついた」
「あははっ、ごめんて」
佑嗣のセットされた髪をくしゃくしゃと撫で回した。
「あー!俺の30分のセットになんてことすんだ!」
「良い感じにくるっとしてるよね、かわいいねぇ」
「思ってないだろ!」
「ふはっ」
ゆるめの天パである佑嗣の髪を手で直しつつ、二人で笑い合った。
昨日あんなことがあって、さっきだって嫌な気分になったけど、自然に笑えてる自分に安心した。
全部、佑嗣のおかげだ。
本当に、佑嗣には救われてる。
昔からずっと一緒だから、言いたくないと思ってることは無理に聞いてこないし、言いたいけど言いづらい時は優しく聞いてくれる。
佑嗣が居てくれればいい。
それは恋愛的な意味ではないけれど。
後はもう、祥馬に関わらないで残りの高校生活を終わらせたい。
もう、恋とか愛なんていらない。
髪を染めたことが、忘れるための第一歩。
俺に残ってる未練をひとつずつ捨てていく。
もう、昨日のことはなかったことにする。
全部全部忘れる。
二つ目は…
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