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第66話

それから残りの授業中、ずっと考えていた。 でも、やっぱり俺の考えは変わらなかった。 帰りのHRが終わると、佑嗣に一声掛け、一番に教室を出た。 昨日みたいなことが起こらないように。 廊下では数人の女子に帰りを誘われたけれど全て断って、足早に学校を出た。 まっすぐ家に帰る気にはなれなくて、最寄駅に着けば帰り道にある公園に向かった。 まだ日が沈む前で、小学生くらいの子ども数人がアスレチックで遊んでいる。 ベンチに座り考える。 「他に残ってる未練って、何だろ…」 中学で一緒にやってきたサッカー。 祥馬と一緒に出た試合。 水科先輩は休部して、ゆっくり休めって言ってくれたけど、結局、祥馬がサッカー部を辞めでもしない限り、俺は戻れない。 たまたま練習試合をしてないから、今のところ支障はないけど、たとえ練習でも試合となればきっと支障をきたす状況だ。 だからって祥馬に、サッカー部を辞めろなんて言えない。 それなら、俺が辞めるしかないでしょ? 「お兄ちゃんどうして泣いてるの?」 「え…?」 うつ向けていた顔を上げると、そこには小さな男の子が不安そうな表情で俺を見ていた。 「どこかいたいの?」 その言葉にハッとして、頬に触れるとそこは濡れていた。 いつの間に俺は泣いていたんだろう。 「いたいの?」 「うん…心がね、痛いんだ」 「ぼくがおまじないやってあげる」 そう言って男の子は俺の胸に手を当てた。 「いたいのいたいのとんでけー!」 「ふふっ、ありがと」 「うん!」 迎えに来たらしいお母さんに連れられて、その男の子は公園から出て行った。 少しだけ、元気になれた気がする。

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