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第68話
周りにいる生徒がチラチラと言い争っている俺たちを見る。
それに気づいた祥馬は舌打ちすると俺の腕を掴んだ。
まずい。
そう思った時にはもう遅くて、俺は無理やり男子トイレへと引っ張られた。
そこに生徒は一人もいなかった。
「ちょっと、何すんの」
「当てつけかって言ってんだよ!」
「だから何が!」
「俺がお前に髪染めない方がいいって言ったの、覚えてんだろ。だから2年になっても染めてなかった。なのにっ!」
「いたっ…!」
祥馬に髪を掴まれ引っ張られる。
「当てつけだよな!?染めない方がいいって言った髪染めて、部活休部して!」
「痛いっ、離せ!祥馬っ」
「全部お前のせいだって?そう言いたいのかよ!ふざけんな!」
髪を引っ張られたかと思えば今度は押されて、体もそちらへ倒れる。
個室の扉に背中を打ち付けた。
「いっ…た…」
背中に走った痛みに顔を歪める。
「ふざけんな…」
「…ふざけてないよ。ふざけてるのは祥馬の方じゃない?何、なんなの?俺のことどうしたいの?どうでもいいでしょ、俺のことなんて」
思わず出た言葉は紛れもなく本音で。
祥馬は悲しそうに俺を見た。
「っていうか髪のこと、覚えてたんだ…」
そんな顔を見ていられなくて目を伏せた。
でもすぐに、また髪を掴まれ顔を上に向けさせられた。
「痛っ!ちょっと、髪掴むのやめてくれない?痛いんだけど」
祥馬の腕を掴んで離させた。
「大体さぁ、何でほっといてくれないの?俺が髪染めたって、部活辞めたって、別に祥馬には関係ないでしょ?」
この言葉が、祥馬を怒らせた。
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