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第69話

「俺がお前を拒絶したから?」 「え?」 「だから、俺には関係ないって?」 祥馬は俺の肩を掴み、個室の中へと押し込んだ。 「祥、馬…」 「はっ…、何?怖がってんのかよ」 嘲笑うように言いながら、ガチャンと後ろ手で扉の鍵を閉めた。 明らかに怒っているのが分かる。 今まで怒ったところなんて何度も見てるはずなのに、今までのそれとは全く違う。 初めて見る祥馬の様子に俺は正直、恐怖を感じていた。 思わず後ろに下がろうとしたら、便器に足が当たってバランスを崩した。 「っ…」 倒れそうになったところを、祥馬が俺の腕を掴んで支えてくれたおかげで倒れずに済んだ。 でも、その掴んだ腕を離してくれない。 「離し、て…」 「元はと言えば、お前が俺のこと好きなんて言うからいけないんだろ」 「っ…!」 祥馬が話し出した言葉を聞いてドクンと心臓が嫌な音を立て始める。 「あんなことお前が言わなければ、こんな風にはなってなかった」 「やめて…」 俺は掴まれてない方の手で片耳を無意味に塞いだ。 「お前のこと軽蔑なんてしなかった。友達として、好きなままでいれたのに」 「や…」 「全部お前のせいだろ、瑛翔」 涙がこぼれた。 全てを否定された気持ちになった。 ちゃんとした言葉じゃなかったけど、勢いで言ってしまった言葉だったけど、伝えた俺の気持ちは、想いは、全部、間違っていたの?

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