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第74話
「へぇ〜神代って久城のことが好きなんだ?」
「っ…!!?」
突然聞こえてきた声にびくりと肩が震えて、顔を上げて辺りを見渡した。
一番後ろの、ロッカーの上にクラスメイトの鷹来(たかぎ)くんが座っていた。
どうしようと内心焦っていると、鷹来くんは笑った。
「あははっ、そんな顔しなくてもいいじゃん。ってか神代が入ってくる前から俺居たんだし」
確かにちゃんと確認しなかった俺が悪い。
でも、どうしてこんなところに…
なんて思ったけれど、そうだ。
鷹来くんはサボリ魔だ。
「また授業サボってるの?」
「それは神代も同じでしょ」
そうだった。何も言い返せない…。
カタンと音を立てて鷹来くんはロッカーから降りて、こちらに向かって来た。
俺は思わず席を立った。
これ以上、何かを詮索されるのは嫌だった。
さっきの独り言で話してしまったようなものだったけれど。
それに…
「どこ行くんだよ」
「いや、だって…」
鷹来くんはここ最近、祥馬の前の席ということもあり、祥馬と絡んでいるのを度々見かけた。
お昼だって、一緒に食べていることもあった。
「言ってたんだよな、久城が。あれって本当だったんだな」
鷹来くんが意味深な発言をした。
当然、気になってしまう。
でも…
「気にならない?」
「……」
「神代のこと言ってたんだけど」
俺が何も言わずその場に立ち尽くしている間に、どんどん距離は近づいていき、机一つ挟んだ所までやって来ていた。
祥馬は俺のことをなんて…
でも、俺は聞いて後悔することになる。
更に距離を詰めて、鷹来くんは俺の耳に唇を寄せた。
そして、囁くように言った。
「神代は男もイけるんだって」
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