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第82話

「じゃあ…」 祥馬の横をすり抜けようとした時、祥馬は俺の腕を掴んだ。 「待てよ」 「離して…」 腕を引かれ壁に押し付けられる。 祥馬は衣装の首元を掴みぐいっと引っ張った。 「っちょ、なに…」 「消えたな」 すぐに何のことか分かった。 なんとなく嫌な予感がして腕を振り払ったけど、既に遅く、祥馬は前に噛んだ所に再び噛み付いた。 「いッ…!」 噛み付いて、離れない。 ギリギリと力が入っていき、歯が皮膚に食い込んでいくのが分かる。 左手は祥馬の右肩を掴み、右手で祥馬の後頭部を掴み離れさせようとするも上手くいかない。 その間にも祥馬は力を抜くことなく噛み続ける。 「い…たいっ…離し、祥馬っ…」 この間とは比べられないくらいに痛みが広がっていく。 バンバンと祥馬の背中を何度も叩く。 「痛い、痛いっ…!」 そして歯が離れたかと思えば、ぢゅっと吸われる。 「っ…!!」 「気に入らない…」 「え…?」 「…消毒しないで、膿んで、ぐちゃぐちゃになって、一生消えない傷になればいいのにな」 「な、に言って…」 祥馬は俺と一切目を合わせないで呟いた。 そしてこちらを向いた祥馬の表情は歪んでいた。 「治りそうになったらまた、噛んでやるよ」 そしてトイレから去って行った。 「どういう意味…どうして…ぃっ」 痛みを感じて鏡を見ると、そこには滲んだ真っ赤な血と、赤黒い鬱血の痕が付いていた。 「この間より酷い…」 触ると酷い痛みが走った。 でも…

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