83 / 260
第83話
「あ、遅かったな。大丈夫?」
「あー…うん、平気…」
あの後、保健室まで行って、傷パッドだけもらいトイレで傷口に貼ってから教室へ戻って来た。
教室に入るなり佑嗣から声を掛けられて、俺は曖昧に笑って目を逸らした。
「着替えて来る」
逃げるように簡易更衣室へ入った。
着替える時、傷パッドに手が当たって痛みが走った。
さっきの祥馬の言葉が頭の中に流れる。
"消毒しないで、膿んで、ぐちゃぐちゃになって、一生消えない傷になればいいのにな"
あの言葉はどういう意味なの?
消えない傷が俺に残って、どうなるの?
何が気に入らないの?
何一つ答えは分からない。
諦めるなんて思っておきながら、こんな風に祥馬のことを考えてばかりで、消せないでいる。
否、消させてくれない…。
それから祥馬と話すタイミングはなく、モヤモヤした思いを抱えたまま、文化祭当日を迎えた。
「瑛翔くーん、これ3番テーブルにお願い!」
「はーい」
「神代くーん!注文いいですかー?」
「今行きます」
「神代くんー!」
「ちょ、ちょっと待って…」
クラスの催し物は大盛況で、常に廊下に人が並んでいた。
ともだちにシェアしよう!