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第83話

「あ、遅かったな。大丈夫?」 「あー…うん、平気…」 あの後、保健室まで行って、傷パッドだけもらいトイレで傷口に貼ってから教室へ戻って来た。 教室に入るなり佑嗣から声を掛けられて、俺は曖昧に笑って目を逸らした。 「着替えて来る」 逃げるように簡易更衣室へ入った。 着替える時、傷パッドに手が当たって痛みが走った。 さっきの祥馬の言葉が頭の中に流れる。 "消毒しないで、膿んで、ぐちゃぐちゃになって、一生消えない傷になればいいのにな" あの言葉はどういう意味なの? 消えない傷が俺に残って、どうなるの? 何が気に入らないの? 何一つ答えは分からない。 諦めるなんて思っておきながら、こんな風に祥馬のことを考えてばかりで、消せないでいる。 否、消させてくれない…。 それから祥馬と話すタイミングはなく、モヤモヤした思いを抱えたまま、文化祭当日を迎えた。 「瑛翔くーん、これ3番テーブルにお願い!」 「はーい」 「神代くーん!注文いいですかー?」 「今行きます」 「神代くんー!」 「ちょ、ちょっと待って…」 クラスの催し物は大盛況で、常に廊下に人が並んでいた。

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