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第84話

そして午後に入り、もうすぐ交代の時間という時だった。 よく知った人が入って来た。 「あ!瑛翔くん久しぶりー!わぁ!王子様かっこいいね!」 「え、あ…桐崎さん……」 そこには祥馬と腕を組んで笑う桐崎さんが居た。 桐崎さんと会うのは、4人で遊園地に行った日以来で、椎河さんと別れてから初めてだった。 席に案内すると祥馬は桐崎さんに一声かけて教室を出て行った。 「あの、妃捺と別れた時、祥馬くんに色々言っちゃって…瑛翔くん祥馬くんに何か言われたよね。ごめんね」 「いや、俺こそ…桐崎さんの友達なのに傷つけちゃって…」 「ううん!私こそ無理やりくっつけるようなことしちゃったし。妃捺も今は大分吹っ切れてるみたいだから…」 「そっか…」 椎河さん、幸せになってくれたらいいな…。 「それで…瑛翔くん、そのことで祥馬くんと喧嘩してる?」 「えっ?」 「最近の祥馬くん、瑛翔くんの話全然しないし…サッカー部休部してるっていうのは聞いたんだけど…もしかして私のせい?」 「違うよっ…」 不安そうに俺を見上げる桐崎さん。 「サッカー部は…まぁ、色々あって休ませてもらってるけど、桐崎さんのせいじゃないよ」 「でも…」 「瑛翔くーん!」 奥のテーブルから名前を呼ばれる。 「あ、ごめんね…」 「ううん、私こそ仕事中にこんな話ごめんね。頑張ってね」 そして俺が席から離れると、見計らったかのように祥馬が桐崎さんの元へ戻って来た。 二人は笑い合いながら何やら楽しそうに話している。 無意識に首の傷口に触れた。 ズキズキするのは、首の傷なのか、心なのか、両方なのか、俺には分からなかった。

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