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第85話
「じゃあ休憩入るね」
「あ、瑛翔くん着替えないで!」
「え、どうして?」
「その格好のまま宣伝して来てよ」
「いや…」
「お願い!」
「…分かったよ」
「ありがとう!じゃあこれお願いね!」
束のビラを渡された。
休憩なのに、呼び込みを頼まれたということ…?
「瑛翔も相変わらず押しに弱いよな」
そう言って笑っているのは上はクラスTシャツに下は制服姿の佑嗣。
佑嗣はキッチン担当で、コスプレは元々していない。
「どうして俺だけ…」
「まぁまぁ…ほら、せっかく休憩なんだし早く行こう」
教室を出る時、まだ中にいる祥馬と桐崎さんの方をチラッと見た。
二人は一つのケーキを食べさせ合って、桐崎さんが照れたように笑っていた。
まるで見せつけるように。
そんな訳ないのに。
「瑛翔ー?早くしないと置いてくぞー」
「あ、うん…」
そして俺は佑嗣と一緒に教室を出た。
交代の時間が佑嗣と一緒で良かった。
集まってくる人達にビラだけ渡して、写真を撮りたいなどと言ってくる人を見事にあしらってくれる。
「すごいね佑嗣…」
「そう?せっかく瑛翔と文化祭回れるのに邪魔されたくないし」
「たくさん回りたいもんね。次どこ行く?」
「…手強いな」
「なに?」
「いや、そうだな…次は…」
その後はお腹いっぱいになるまで色んな屋台を巡り、校内の催し物ではお化け屋敷やら射的やらを回って過ごした。
楽しいという感情が自分の中にあるのが、久しぶりな気がした。
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