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第87話

ようやく音が聞こえなくなった。 「ばか…」 「ははっ、ごめん。でも澪央だって最後は乗り気だっただろ?」 「〜っばか!」 俺は身を潜めて、その場から二人が出て行くまで動けなかった。 ようやく二人が出て行ってから椅子に膝を抱えて座り、膝に額を押し付けた。 「なんなの…」 桐崎さんが好きだから、一生俺には振り向きなんてしないって、そういうメッセージ? そんなの、好きって言ったあの瞬間に嫌悪されてから分かってるよ。 何で、こんなに傷つけられなきゃいけないの… なんて、祥馬のせいにして、早く忘れればこんなことも思わないのに。 「俺の涙腺馬鹿になってるなぁ…」 涙がこぼれた。 その時ガチャリと扉が開いて、俺は顔を上げる。 そこには、 「しょ、うま……」 そして祥馬は、鍵を締めた。 「また泣いてんのかよ」 その声音は呆れたような、そんなトーンだった。 「瑛翔って泣き虫だったんだな」 そう言いながら机と机の間の階段を上り、近付いてくる。 俺は慌てて椅子から立ち上がった。 「桐崎さん、は…」 「今送って来た」 そして祥馬は、優しく囁いた。 「おいで?」

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