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第89話

「誰彼構わずじゃねぇ。瑛翔にしかしてない」 その言葉が嬉しいことなのか、悲しいことなのか、俺にはもう分からない。 「やっ…ん、ふぅ…ッ」 鷹来くんの時みたいに噛めば、離れるかもしれない。 それなのに、そんなこと俺には出来なくて。 「んっ、祥馬っ、やだ!」 ドンッと力一杯思いっきり押すと、祥馬は離れた。 「瑛翔、受け身じゃなくて、応えろよ」 「嫌だ」 「…これで最後にするから」 「…っ……」 祥馬の表情からは何も読み取れない。 「な?瑛翔…」 「っ…本当に?」 「あぁ」 そして唇が再びそっと重ねられた。 とんっと唇が舌で叩かれる。 小さく口を開け、舌を伸ばした。 「ん…」 くちゅくちゅと唾液の混ざる音が耳に届く。 舌を絡み合わせ、吸い、吸われ、口内を隈なく舐められる。 「はッ…」 苦しくなって、ようやく唇が離れるとき、いつものように唇をペロリと舐められた。 「瑛翔、キス上手いんだな」 「……もう十分でしょ。離して」 掴まれたままだった腕に力を込める。 でも、祥馬は離してくれない。 「ねぇ…」 「やっぱり俺…」 ダンッ 「いった…!ちょっと、なに…?」 床に押し倒されていた。 打ち付けた背中が痛い。 傷がない方の首筋にキスをされた。 さっき見た光景が、頭に浮かんだ。

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