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第95話

ちょん、と触れるだけのキスをされた。 そして、顎を掴んでいた手は顎から首へと滑らされた。 首元でその手は止まる。 「っ!やだっ、やめっ…」 力が、少しずつ込められていく。 「っく、…苦しっ…しょぅ、…ま…っ」 俺は、何をされてるの? じわじわと苦しくなっていく。 「くっ…は…ッ…」 足をバタつかせ、机の脚を蹴るもそんなものは無駄な抵抗で、両手も縛られたこの状況で逃げる術はない。 「っ…ぅ……離、し…ッ…」 どんどん絞められていく感覚に、身体からは力が抜けていく。 祥馬は無表情で俺を見下ろしている。 それがとても怖かった。 意識が遠のきそうなところで、パッと手が離された。 「ゲホッ…ゴホッ、ゴホッ…」 急に酸素が体内に取り込まれ噎せ返り、俺は溢れた涙を自分で拭うことすら出来ない。 「いいな、その顔」 そう言って笑った祥馬の目はどこかギラついて見えて、俺の涙を指先で拭った。 こんな祥馬知らない。 祥馬はいつだって、元気で、少し褒めるとすぐに調子に乗って、ふざけてばかりで、 でもすごく優しくて…。 「もっと、苦しめよ」 俺の知ってる祥馬はどこ? 「何考えてる?」 祥馬を見つめて何も言わないでいると、祥馬が眉間に皺を寄せて聞いてきた。 「祥馬の、ことだよ」 「俺のこと?」 縛られた状態のまま両手を前に出し、祥馬の顔に触れた。 「こんな祥馬、俺は知らない」 「……そう」 「あっ…」 祥馬は短くそれだけ言うと、衣装の中へと手を入れてきた。

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