98 / 260
第98話
そして音楽室の扉は閉められた。
衣装は脱がされたから、汚れてはいない。
ただ、今すぐシャワーを浴びたい。
全部洗い流したい。何もかも全て。
「この想いも汚れも全部、一緒に流せたらいいのに…」
音楽室と繋がっている準備室で顔を洗い、口をゆすいだ。
胸ポケットに入っていたハンカチで顔を拭って、服を整え、音楽室を出ようとした時、音楽室に人が入って来た。
「あ、まだいた!神代、お前久城と…」
俺を見た鷹来くんは目を見開いた。
「神代それ、どうしたんだよ」
「え?」
やばい、汚れ残ってたかな。
俺は自分の頬を触った。
「その衣装!首のとこ、血が滲んでる」
「え、あ!…やっ、大丈夫、大丈夫だからっ…」
まずい。
普通に衣装を直しちゃったから…まだ血が出てたんだ。
サッと衣装を押さえると今度はその手首を掴まれた。
「な、なに…」
傷を見られたくないと思って、なんとなくビクビクしてしまう。
「この跡は何?」
「っ…!!」
グイッと袖を捲られ、手首にはさっきまで縛られていた跡が露わになった。
やばい。もう無理だ。
「えっと、これは…」
「さっき、久城と廊下で会って、音楽室に…って何か言いかけて止めたから、ちょっと気になって来てみれば…」
俺の手首の跡を撫でながら鷹来くんは呟く。
そしてその手を急に離したかと思えば、あっという間に首元の衣装をはだけさせられた。
「あっ!ちょっ…」
「うわっ…お前これは酷い…」
鷹来くんは顔を歪めた。
「これ、歯形か?」
「っ…あの、」
「久城にやられたんだよな?」
「…ち、違っ」
「こんなことされても久城のこと庇うのかよ」
庇うなんて、そんなつもりは…
ともだちにシェアしよう!