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第102話
鷹来くんは俺の頬に触れた。
俺を見下ろす瞳は甘く、優しげだ。
「じゃあさ、とりあえずお試しってことでどう?」
そんな提案をされた。
「お試し?」
「そう、お試し。いきなり付き合うのもいいけど、お試しってことにした方がダメだった時の傷も浅いかもしれないし、何より神代の気が楽かなって」
「はぁ…」
「え、何そのため息は」
どこまで優しいんだろう。
祥馬に酷くされた後だから?
心が弱くなってる?
「ありがとう。鷹来くんのこと好きになれるかは分からないけど、忘れさせて…」
二人で教室に戻ると、クラスメイトはもう居なくて、そこに居たのは佑嗣一人だった。
「瑛翔っ…!!」
今にも泣き出しそうな顔で佑嗣は俺の前までやってきて、ぎゅっと俺を抱きしめた。
「お前っ、返事くらいしろよ…どれだけ心配したか…祥馬に何された…?」
俺の首元を見て、きっと察したのだろう。
「また、噛まれたのか?」
「っ…」
「それにすごい……っキスマークが…」
俺よりもずっと、佑嗣の方が痛そうだ。
そして佑嗣の言葉にハッとした。
「えっ?」
そして、思い出した。さっきの先生の、言葉を。
"程々にしなさいね"
もしかして、そう意味で?
「っ…!」
あれは、鷹来くんとのことを言ったのかは分からないけど、でもきっと勘違いしたに違いない。
うわー
恥ずかしい。
俺もう保健室行けない…
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