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第103話
「そろそろ離れてよ」
突然グイッと腕を引かれて、今度は鷹来くんの腕の中に収まった。
「何だよ鷹来」
「神代は今俺と付き合ってんの」
「は?」
「ちょ、待って。鷹来くん、そんな軽く言わないで」
「大丈夫、相手が藤白だから言ったんだし。軽々しく他の人には言わないから」
優しいんだか優しくないんだか、分からないな。
「え、本当に?瑛翔」
「あ、うん…って言ってもお試しだけど」
「お試し?」
佑嗣は不思議そうに首を傾げた。
「そう、お試し」
俺よりも先に鷹来くんが口を開いた。
「お試しで付き合ってみて、神代がやっぱりダメなら、なかったことにするってこと」
「鷹来はそれでいいんだ?」
「うん、まぁできることなら今すぐにちゃんと付き合いたいとは思うけど、今の神代にそれを言うのは酷だと思うし」
「ちゃんと考えてるんだな」
「まぁね」
そう言って鷹来くんは俺を離しながら笑った。
「……瑛翔がそれでいいなら、いいけど…鷹来、瑛翔のこと傷つけるんじゃないぞ」
「分かってるよ。藤白は神代のお父さんか何かか?」
「あははっ」
「瑛翔、そこ笑うところじゃない」
「えっ、ごめん、面白くてつい…」
「まぁ、いいけど。そろそろ完全下校時間だし、帰ろ」
そして俺たちは三人で学校を出た。
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