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第104話

文化祭2日目ーー。 「瑛翔、」 下駄箱で話し掛けて来たのは祥馬だった。 「……っ」 俺は無視して教室に向かった。 どうして話しかけるの? 祥馬とは極力話さないで、関わらないで過ごしたい。 そう思ってるのに、どうして俺の中に入ってくるの? 教室に着くと昨日汚してしまったことを謝りながら衣装を係の人に渡した。 「衣装は全然いいけど、瑛翔くんの怪我は大丈夫なの?」 「うん、平気」 「今日はキッチンの方やる?」 そう言ってくれたけど、キッチン係には祥馬がいる。 担当時間は少しだけど被ってる。 出来れば、一緒になるのは避けたい。 「いや、接客の方で大丈夫だよ。ただ、首まで隠せる代わりの衣装ってあるかな?」 「これなら、マントがあるから隠せるかも」 渡してくれたのは悪魔の衣装だった。 「ありがとう」 お礼を言って、俺は簡易更衣室で着替えようと中に入った。 着替え終わり、後はマントを着るだけというところで、誰かが入って来た。 昨日も数人で同時に着替えたから、何の気なしに振り返るとそこには、 「何でさっき無視したんだよ」 「っ祥馬、…なんでっ…」 思わず数歩後退る。 「聞いてんのはこっちなんだけど」 外に聞こえないように、お互い小さな声で話す。 「話したくない、からだよ…」 目を合わせられない。 「ふーん…」 「っ!いた、やだ…っ」 祥馬は俺の髪を突然掴み引っ張った。 痛みによろけて、ガタンと机に当たり、大きな音が鳴った。 「瑛翔くーん?大丈夫ー?着替え終わったー?」 「あ、うん!」 俺は祥馬の手をなんとか振り払い横をすり抜け、簡易更衣室を出た。 「後でな」 そんな言葉が背中越しに聞こえたけど、聞こえないふりをした。

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