109 / 260

第109話

「桐崎さんに言ってもいいの?」 「はっ、お前は優しいから澪央を傷つけるようなこと言わない。いや、言えないだろ」 「っ……」 自信満々に言う祥馬にムカついた。 その通りだった。 俺が、桐崎さんを傷つけることができるわけがない。 俺の腕を掴んでいる祥馬の手を引っ張り、そこへ噛みついた。 「いたっ」 祥馬は小さく声を漏らしパッと手を離した。 その隙に制服のシャツを掴み取り更衣室を出た。 当然、ちゃんと着れてなくて 「「きゃー!!」」 悲鳴が上がった。 視線が俺に集まる。 「あー…ごめんねっ」 笑ってそれだけ言いシャツを着ながら教室を出た。 「あっ、神代くん!もしかして今日はもう終わりなの!?」 「えっ、ウソ!」 「間に合わなかったぁー」 と、廊下に並んでる女子たちに声を掛けられる。 「ごめんね、交代なんだ」 「残念〜」 なんて話していると後ろの扉が開いた。 祥馬かと思って慌てて走り出そうとしたら手首を掴まれた。 「瑛翔っ!どこ行くんだよ!」 「え、あ、なんだ、佑嗣か…」 「……更衣室でなんかあった?」 佑嗣は俺の手首を掴んだまま聞いてくる。 「…祥馬が来て……」 「またあいつか…」 "壊したい" そう言った真意は分からない。 「神代」 「え、あれ、鷹来くん?どうしたの?」 神代くんが昨日と同じ執事の衣装姿で教室から出て来た。 「ちょっと早いけど交代してもらった。なんか様子変だったから」 「あ…ごめん…」 「…じゃあ俺行くな。鷹来に聞いてもらえ」 ポンと頭を撫でられ、佑嗣は去って行った。

ともだちにシェアしよう!