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第110話

「何があった?」 「えっと…」 何を話せばいいの。 「無理には聞かないけど…」 「ここじゃちょっと…」 校内は人で賑わっていて、とても話せる状況ではない。 「こっち」 鷹来くんはそう言って歩き出した。 俺はその後についていく。 辿り着いたのはいつぞやか、鷹来くんがサボっていた空き教室。 文化祭でも使っていないみたいだ。 「はい、座って」 そして適当な席に座るよう促されたので席に着く。 「で?どうした?」 「えっと…」 そして先ほど起きたことを口にする。 「壊したい、かぁ…」 「俺、もう祥馬のこと分かんない…」 「…俺にも理解できないな」 鷹来くんはうーんと唸っている。 「鷹来くん」 「何?」 「消させてくれるって言ったよね」 隣の机に座ってる鷹来くんを見上げた。 「あぁ」 「…」 「ふっ、神代って甘えるの下手だな」 鷹来くんは柔らかく笑って、座ったままの俺の前に立ち、ふわりと抱きしめてくれた。 少しだけ、心が温かさを取り戻した気がした。 それから落ち着いた俺は鷹来くんと文化祭を回った。 今まではエスコートする側だったから、エスコートされるのはなんだかくすぐったかった。 終始、鷹来くんは優しくて、すごく気を遣ってくれて、たまに面白いことを言って、そんな鷹来くんの隣に立っているのはとても居心地が良かった。 そして2日間の文化祭は幕を閉じた。

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