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第111話

あの日以来、祥馬は俺が一人になるところを狙ってか、話しかけてきて、時にはちょっかいを出してくるようになった。 それを鷹来くんに話して、なるべく一緒に居てくれてるけど、ずっとなんていうのは流石に無理で。 「ごめん!すぐ戻るから!」 「大丈夫だよ、祥馬も部活行ったし」 「…もしあれだったら先帰っていいから」 「ふっ、分かったから早く行きなよ。また怒られるよ?」 鷹来くんは授業をサボり過ぎて、ついに呼び出しをくらってしまった。 俺を置いて行くのが心配みたいだったけど、祥馬が部活に行ったのは確認したし、大丈夫だろう。 なんて、甘い考えだったとすぐに思い知る事となる。 耳に感じるくすぐったさで、目が覚めた。 どうやら俺は机に突っ伏して眠ってしまっていたみたいだ。 ハッキリしてきた視界に映ったのは祥馬だった。 ガタンッと音を立てて俺は椅子から立ち上がった。 「な、なんで」 「明日試合だから早めに終わったんだよ。お前本当にサッカー部に戻って来ねぇの?」 「…戻らない」 「サッカー好きじゃなかったのかよ」 「好きだよ、でも…」 どうやってこの場から逃げよう… 俺はそればっかり考えていて、祥馬の表情まで見れてなかった。 無意識に治りかけている首筋の傷を掻く。 いつもなら鷹来くんが掻くのを止めてくれるんだけど、今はここにいない。 突然伸びてきた手は、俺の手を取った。 「痒いのか?」 「っ…触んないで!」 パンッと乾いた音が教室内に響く。

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