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第113話

この間と違って両手を拘束されてる訳でもない。 俺が両手で掴めば、祥馬の片手を確実に押さえることは出来る。 俺は左の頬に触れてる祥馬の手に触れた。 祥馬が目を丸くしてそれを見た、その瞬間に手を離し両手でカッターを握っている右手を掴んだ。 「っ!」 やっぱり、両手でなら祥馬は俺の手を振り解けない。 グッと力を入れる。 さっき、ポケットに入れてるスマホが震えた。 多分、鷹来くんからの終わったっていうメッセージだと思う。 あと少し、この場を凌げれば、大丈夫。 そんなことを考えてると掴んでいた右手を祥馬は無理やり振り解こうとした。 「いっ…!」 その動きで、俺の手首にカッターの刃が当たり、手首の内側が切れた。 力を入れてるから、切れた傷口から血が滲み出す。 不意に祥馬は右手を自分の方へと引いた。 突然の動きに俺はついて行けず、数歩前のめる。 そして顔が近づいた祥馬はワイシャツの上から俺の首に噛みついた。 「っ…!!」 もう、どうすればいいのか分からなくなる。 この手を離してしまったら、間違いなく切りつけられる。 でも、結局噛まれて、傷つけられてる。 シャツの上からだから、そこまで痛みはない。 きっとそこまで深くは噛まれてない、と思っていた矢先、自由だった祥馬の左手がシャツを捲った。 そして、傷口を舐めたかと思えば容赦無く噛み付いてきた。 「いっ…た…!」 「手、離せよ」 「や、だ…っ」 その時だった。 ガラッと教室の扉を開ける音が聞こえた。 「神代?…っ久城!何してんだよ!」

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