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第117話
「おはよ!」
約束の時間に駅前で待っていれば、鷹来くんがやって来た。
白のプルパーカーに黒のアンクルパンツという見慣れない私服姿は新鮮だ。
「今日ちょっと寒いな」
「そうだね」
「まだ秋満喫してないなぁ…」
「秋って何を満喫するの?」
「え?そりゃあ………紅葉狩りとか?」
「ぷっ…」
「笑うなよー」
なんて話しながら駅前のモールに入った。
日曜日なだけあって人も多い。
「神代の好きな食べ物って何?」
「え、っと…和食かな」
「ははっ、なるほど、和食か」
「何で笑ったの」
「いや、普通ならカレーとか、ハンバーグって具体的に言うもんじゃん?まさかの和食って、範囲広いなって思って」
ハンバーグ…
祥馬が好きな、
と、そこまで考えて我に帰る。
違う。
そうじゃない。
そんなこと、考えなくていい。
「じゃあそこ入ろ」
そう言って鷹来くんが指差したのは和食屋さんだった。
「いいの?鷹来くんは?何が好きなの?」
「いいよ、俺は何でも好きだから」
笑って俺の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「ちょ、それやめっ…」
「神代の頭が丁度撫でやすい高さにあるんだからしょうがない」
「は?それって俺の背が小さいって言ってる?」
「違う…いや、違くないか。そう、撫でやすい身長!」
「それフォローしてないよね」
「うん」
「ひどっ!」
「ははっ!ほら、早く入ろ。俺お腹空いた!」
お互いに笑いながら店内へと入った。
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