118 / 260

第118話

「和食の中では特に何が好き?」 「え、特に?うーん…かぼちゃの煮付けかな」 「あははっ!そうなんだ」 少し悩んで答えたのに、鷹来くんは可笑しそうに笑った。 「ちょっと、馬鹿にしてるよね?」 「してないしてない!チョイスが、なんかいいな。美味いよな、かぼちゃの煮付け。俺もばーちゃんが作ったかぼちゃの煮付け好きだなー」 「鷹来くん家はおばあちゃん結構料理するの?」 「あー……俺ん家は、母さんいないから」 「え?」 「いや、死んでるとかじゃないよ?仕事でさ、ずっと海外に行ってんだ。…そういえば全然会ってないな」 頼んだ料理が運ばれてきた。 「まぁまぁ、俺の話は後にして、冷めないうちに食べような!」 それから食べ終わるまで、ひたすら鷹来くんに質問攻めをされた。 好きな色や好きな季節、誕生日や血液型まで。 「絶対覚えてないよね」 「えー?覚えてるよ」 「ほんとに?」 「ほんとほんと。誕生日は4月14日。大分過ぎちゃってるよな〜」 「じゃあ血液型は?」 「A!」 「好きな色」 「青!」 「好きな…「季節は春!」 質問をする前に答え出して、思わず笑ってしまった。 「ちょ、まだ言ってないのに」 「好きな食べ物はかぼちゃの煮付けで、あ、嫌いな食べ物は?」 「…辛い食べ物」 「辛い食べ物?キムチとか?」 「うん、そういう系」 「わさびとか胡椒とかは?」 「そういうのは大丈夫」 「へぇー意外」 「意外ってなに」 「澄ました顔して、"え、これ辛い?全然平気だけど"って感じで食べてそう」 なんて、俺の真似をしてるつもりなのか、いつもと口調を変えて喋ってる。 「なにそれ…鷹来くんの中の俺のイメージなんか酷くない?」 「そう?っていうか、最初の頃とは大分イメージは変わったなぁ」 「え?」 「もっとスカしたやつかと思ってたから」 「それ本人に言う?」 「ごめんごめん」 笑いながら鷹来くんはまた、俺の頭をくしゃりと撫でた。 鷹来くんと一緒にいると、自然体で居られて、なんだか温かい。 その温かさは、佑嗣と一緒にいる時とは少し違っていた。 何が違うのかは、この時の俺には分からなかった。

ともだちにシェアしよう!