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第118話
「和食の中では特に何が好き?」
「え、特に?うーん…かぼちゃの煮付けかな」
「あははっ!そうなんだ」
少し悩んで答えたのに、鷹来くんは可笑しそうに笑った。
「ちょっと、馬鹿にしてるよね?」
「してないしてない!チョイスが、なんかいいな。美味いよな、かぼちゃの煮付け。俺もばーちゃんが作ったかぼちゃの煮付け好きだなー」
「鷹来くん家はおばあちゃん結構料理するの?」
「あー……俺ん家は、母さんいないから」
「え?」
「いや、死んでるとかじゃないよ?仕事でさ、ずっと海外に行ってんだ。…そういえば全然会ってないな」
頼んだ料理が運ばれてきた。
「まぁまぁ、俺の話は後にして、冷めないうちに食べような!」
それから食べ終わるまで、ひたすら鷹来くんに質問攻めをされた。
好きな色や好きな季節、誕生日や血液型まで。
「絶対覚えてないよね」
「えー?覚えてるよ」
「ほんとに?」
「ほんとほんと。誕生日は4月14日。大分過ぎちゃってるよな〜」
「じゃあ血液型は?」
「A!」
「好きな色」
「青!」
「好きな…「季節は春!」
質問をする前に答え出して、思わず笑ってしまった。
「ちょ、まだ言ってないのに」
「好きな食べ物はかぼちゃの煮付けで、あ、嫌いな食べ物は?」
「…辛い食べ物」
「辛い食べ物?キムチとか?」
「うん、そういう系」
「わさびとか胡椒とかは?」
「そういうのは大丈夫」
「へぇー意外」
「意外ってなに」
「澄ました顔して、"え、これ辛い?全然平気だけど"って感じで食べてそう」
なんて、俺の真似をしてるつもりなのか、いつもと口調を変えて喋ってる。
「なにそれ…鷹来くんの中の俺のイメージなんか酷くない?」
「そう?っていうか、最初の頃とは大分イメージは変わったなぁ」
「え?」
「もっとスカしたやつかと思ってたから」
「それ本人に言う?」
「ごめんごめん」
笑いながら鷹来くんはまた、俺の頭をくしゃりと撫でた。
鷹来くんと一緒にいると、自然体で居られて、なんだか温かい。
その温かさは、佑嗣と一緒にいる時とは少し違っていた。
何が違うのかは、この時の俺には分からなかった。
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