119 / 260
第119話
ご飯を食べ終わってからは、モールの中を見て回り、鷹来くんは新しいカバンと靴を、俺は新しいジャケットと靴を買った。
ちなみに靴は鷹来くんと色違いという、恥ずかしいことに。
「修学旅行の時、その靴履いて来てよ」
「えー…」
「何で渋るんだよ」
「だって…」
俺は視線を下に落とす。
「あー…ごめん、嫌ならいいから、顔上げて?」
「…嫌なわけじゃないよ、ただ、ちょっと恥ずかしくない?」
チラッと鷹来くんを見ると、鷹来くんは目を丸くしていた。
え、俺変なこと言った?
「狙ってんの?」
「え?」
何を?狙ってる?
「あー…帰りまでは我慢しようと思ってたんだけどな」
「なに?我慢って…ぅわっ!ちょ、鷹来くん!?」
俺の手を掴むなりズンズンと歩き出した。
どこかを目指しているのか、鷹来くんは迷うことなく進んでいく。
辿り着いたのは非常扉近くの、表の売り場からは死角になっている場所で。
「ちょ、待っ…て、」
「ごめん、無理」
立ち止まった鷹来くんに腕を引かれ、背中が壁に付いたかと思えば、俺を逃がすまいと顔の横には鷹来くんの両手が壁に付いている。
いわゆる壁ドンだ。
こんなの、今から何をされるかなんて想像は簡単につく。
「あの、」
俺の方が背が低いから、必然と見上げる形になって、なんだこの少女漫画みたいな体勢は…、なんて考えていたら、鷹来くんの顔が目の前まで近づいた。
「キスしていい?」
「っ…だ、だめっ」
いつもより少し低い声で、こんな息が掛かる距離で言われて、俺は咄嗟に拒否の言葉を口にしていた。
「やーだ」
「んっ…!」
だめだと言ったのに、唇は重ねられた。
「鷹来くんっ、…んぅ」
「なぁ、俺の名前呼んで」
ともだちにシェアしよう!