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第122話
正直、最初の頃と今とでは、鷹来くんに対して思うことは変わってきているとは思う。
でも、それはまだ 好き とは呼ぶには小さな想いで、そして、少し怖い。
そもそも、鷹来くんは俺のこと、興味があるってだけで、好きとは違うとハッキリ言った。
このまま、この想いを膨らませていっていいのか、俺には分からない。
そして、そんな思いを抱えたまま、修学旅行が始まった。
旅行先は沖縄だ。
俺はちゃんと考えてなかった。
こういうクラス単位での移動が多いイベントごとの座席は、出席番号順になる。
隣の座席は祥馬だった。
「グループは違うけど、楽しもうな瑛翔」
「…話しかけないで」
せっかくグループは分かれたのに、こんなところで隣になるなんて…
「もう傷治った?」
「っ…だから、」
「もう一回噛んでやろうか?」
祥馬は手を伸ばしてきて、傷がない左の首筋を撫でた。
俺が窓側の席で、咄嗟に逃げることもできない。
すると、突然前の席から人が体を乗り出してきた。
「久城くん、瑛翔くんの隣いいな〜!ねぇねぇ、席変わってよ」
なんて言ってきた。
「は?嫌に決まってんだろ」
「ちぇーっ!最近あんまり一緒に居るところ見ないからいけると思ったのにー」
そんな風に言いながら、その子は席に着いた。
「そう思われてるんだな」
「…もう話しかけないで」
「…ふっ、まぁいいよ、今は」
そんな呟きが聞こえてきて、そのまま俺は遮断するように目を閉じた。
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